誰もが平伏する権力と、一度寝たら忘れられないセックス

「あうぅぅぅ、いやっ……許して」
 太腿をよじりたてて、麻弥は東吾を突き放しにかかる。
「どうした、腹をくくったんじゃないのか? 処女じゃあるまいし、つまらんところで貞淑ぶるのは、損だろう。杜氏になりたいんじゃないのか?
 畳みかけると、麻弥は悔しそうに唇を噛みしめている。
「悪いようにはしない。お前を女杜氏として売り出してやる」
 駄目を押して、右手を恥肉に届かせた。
 ゆるゆるとなぞると、肉の扉が割れてぬるっとしたものが指腹にまとわりついてくる。

 これがただの暴漢だったら、麻弥はここまで許しはしまい。
どんな女でも心の底でしたたかな計算をしているものだ。
(この男に身をゆだねれば、わたしの思いは叶う。夢が実現するまでは我慢をしよう)
 と、そんなところだろう。
 愛だの恋だのは根っから信じてはいない。そんなものは絵空事にすぎない。
信じられるのは力だけだ。力がある男に女はついてくる。それが、東吾が六十三年で得た人生訓だった。
 下着の中をまさぐると、媚肉が割れてぬっとしたものが指腹にまとわりついてくる。
濡れ溝に沿ってなぞり、上方の肉芽を転がすと、麻弥の抵抗がやんだ。
 顔をそむけながらも、啜り泣いている。
自分の夢のために好きでもない男に身を任せながらも、そんな自分に憐憫を覚えているのだろう。
 滲んだ蜜をなすりつけながら肉芽をまわし揉みすると、
「ぁうぅぅぅぅ……」
 麻弥は快楽の声をあげ、足を一直線になるまで伸ばした。
(『鬼の棲む蔵』P60L9-P61L16)

 自らの性格や外見は、女には好まれぬものだと自覚している東吾が、女性を陥落するために選んだのは、夜の営みのテクニックを磨くこと。
『誰もが平伏する権力と、一度寝たら忘れられないセックス』(『鬼の棲む蔵』P25L11-12)で、女性を征服していくのが東吾のやり方なのです。
これぞザ・昭和の男!

【後編につづく】

Text/大泉りか

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