「漣……」
 下ろした手を、そっとパンティの中へ潜り込ませた。濡れていた。
 濡れていた。ねっとりとした愛蜜が閉じた淫唇から溢れ出て、すでに下着の中心部を湿らせていた。
 手の甲は漣の股間部に当たっている。ペニスはたらんと、あどけなくブリーフの中に納まっている。その柔らかさと体温を感じながら、中指で、自身の粘液にまみれた二枚の唇を割った。
「ああ、漣……」
 貌をさらに寄せた。鼻と鼻を擦りつけ、吐息で漣の寝顔を愛撫する。漣は起きない。知っている。寝入ったばかりの漣の眠りは深く、耳元で囁く凪の声にも、夢の中で応えるだけだ。
 指を一層、裂け目の奥へ押し込んだ。一本だけでは足りなくて、薬指も挿し入れた。根本まで埋めた二本の指を、膣壁の天井部分を擦るようにくねらせた。
「あ、あぁ……」(P34L5―P35L1)

 凪が漣に抱いていた感情は特別なものです。
成長を重ね、肉体こそ男と女へとそれぞれに分化したものの、自分にそっくりな漣は、凪にとっては自分の体の一部。
あらかじめ、共に生きることを約束された存在以外の、何者でもありませんでした。

 それに加えて幼い頃から寄り添って生きてきた肉親への親愛の情、庇護の対象としての慈しみが交じり合い、さらには、“女”という性がその身体の中で暴れ猛り、凪を「ずっと一緒よ……私たちは、離れないの……」(P36L16L)という妄執へと駆り立てたのです。

【後半に続く】

お楽しみに!

Text/大泉りか

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