有限であることが、恋やセックスをスパイシーにする

野外で交わるのはおもしろい。その非日常とスリルにドキドキするし、光や音や匂いの移ろいが刺激的で脳がハイになっていく。服を全部は脱げないし、できるプレイは限られるけれど、いつだって限りあるということが恋やセックスをスパイシーにするのだと思う。彼のシャツの袖に手を差し込んで、もっともっとと希求した、あの感じを私は「欲情」と定義している。

その日はヒールの細いパンプスを履いていたし、無理な体勢だったから、ベッドの上でいつもするように男の尻に足をまわせなくて、もどかしかった。自分のからだであっても、装備しているものが変われば、重さも角度も何もかもが全く変わってしまう。その時々で違うからだになれる、そう思えばおもしろい。いつもは苦手な体位が、場所や装備が変われば気持ちよくなることは当然にある。

ハンカチで私の下腹部を拭いながら、「ごめんね」と彼が謝っていた。「そんなこと言わないで」と少しムッとする。「私もヤりたかったのに、ごめんとか言われたら、性欲処理に使われたみたいじゃん」と抗議する。ビッチと思われてもいいけど、かわいそうな女になるのはいやなんだ。「そうか、じゃあありがとう、最高に気持ちよかった」と言われて満足だ。

ちなみにその翌日も彼とセックスをした。宿泊しているホテルの部屋で、地酒ではなくヨーロッパのワインを用意して。「昨日は突然だったからさ、やり直そうよ」と彼が誘ってくれたのだった。たしかにワインはおいしく、気持ち悪くなることもなく、ベッドもふわふわで、私たちは昨日よりもずっと時間をかけて、色々試しながら、何度も重なり合った。何をするにもスムーズでやりやすく、心地よかった。

でもすべてが終わって、私の髪を撫でながら軽くいびきをかく彼を見ながら、私はやっぱり昨夜の野外セックスを懐かしんでいた。これはたぶん思い上がりなのだけれど、最近はもう、気持ちいいセックスならいくらでもどこまでもできるような気がしている。だからこそ、その場でしか生まれない、即興の音楽のような欲情を大事にしていきたいと思うのだ。

雨あがりの少女
恋愛スピード狂。いつも事故ってます。
Twitter:@ameagari_girl