女性に嫌われたくない!むしろ仲良くしたいときのおまもり

春画 春画―ル所蔵

「女の子に嫌われたくない」。

そんなことを思ったことってありますか?

「なんだか彼女はおれのこと避けてる気がする……」
「気難しいなあ、どう接したら仲良くなれるかな……」

思い過ごしかもしれないし、過去に決定的な溝が生まれる何かをした覚えもない。前もって嫌われないように、相手を褒めたり気を遣ったりすることはある。でもそれが相手のためでなく「自分のため」と相手が悟ったとたん、さらに嫌われかねない。
絶対的な社交辞令で褒められてニコニコ喜んでいる人をみると「相手の行為を素直に受け取る素直な方なんだな」と自分の汚れかけた心を洗われる気持ちになることもある。

「男性が女性に嫌われないためのお守り」とは如何ほどのものなのだろうか?

春画

右の守りを一日に7度ずつ清き紙に書き記し三日間に廿一枚(21まい)書き終える。
これを桐の箱に入れて北の方角にある柱にかけおき毎日礼拝する。
女性に対面するときそれを一枚取り出し、肌に付けて会うべし。
昨日迄ぎくしゃくしていた女性とも嘘のように打ち解けて惚れること奇妙なり

とある。関係が改善されるだけでなく、相手が自分に惚れるとはまさに世にも奇妙である。
現代なら職場でぎくしゃくしている相手が出社する前に、肌にこの紙を貼り付けるのかな。そうまでして人間関係を改善したい気持ちは買いたい。

遠距離恋愛中のあなたへ届け♡おらんだ伝来ペプラホの法

春画 春画―ル所蔵

いま現在進行形で遠距離恋愛中の方いますか?
もしくは過去に遠距離恋愛していた方はいますか?

遠距離恋愛って相手と気軽に会うことできないし、お金はかかるし、ゴールが見えないと不安。やっと出会えてもバイバイの時間が近づいてくるとお互い笑顔になれなくて、まわりのカップルがうらやましくて仕方がない!(わたしも経験した!)

江戸時代にも遠距離恋愛はもちろんあった。珍しいケースとしては外国の人と恋愛関係になり、海外と日本での遠距離恋愛もあったようだ。

オランダ商館が出島へ移転後、女性が出島へ自由に出入りすることは禁じられていたが、丸山の遊女は出島で一夜を過ごすことが許可されていたようだ。そうなると自然と特別な感情が両者に芽生えてもおかしくはないだろう。しかしその彼がオランダに帰国することになれば、遠距離恋愛となってしまう。

「閨中紀聞/枕文庫」によると、「おらんだ伝来ペプラホの法」はオランダ人彼氏と丸山の遊女たちの国際カップルに向けてつくられたおまじないのようだ。

「長い年月遠く離れていてもお互いいつまでも両想いでいられますように。」
「だって愛しているから。次また会えるまで、お互いの気持ちが消えませんように。」
そんな願掛けも込められているのだろう。

そしてこのペプラホの法もこれまた奇妙でおもしろいのだ。

《原材料》
牛肉 三分
五味子(ごみし)二分
麝香(じゃこう)三厘
※五味子はチョウセンゴミシの果実であり、甘味・酸味・辛味・苦味・塩味があり、漢方では鎮咳作用や強壮作用があるそうだ。

原材料3つを細末にする。次に、男のふんどし(オランダ人もふんどし履いたの?)の陰茎のあたるエリア(ふんどしの布で一番汚れるとこでは?)の布の大きさ二寸四方ほどを黒焼きにする(え?)。 そして五月のチマキまたは正月の餅か婚礼の祝いの餅を糊として代用し、細末した原材料を混ぜ、49個分に丸める(まじかよ!)。

本金箔の衣をかけて遊女が47個飲み、彼氏は残りの2個を懐中にいれる。ふたりが遠距離となり年月経て会わなくても必ずお互いに忘れることなく恋い慕う。

枕文庫の著者である渓斎英泉は聞き伝えでこのまじないを知り、このように記述したようだ。誰から聞いたのだろう。そして「彼氏よ! 半分はあなたも飲みなさいよ!」と、ツッコミたくなるまじないである。

今みたいにネットなんてないし、帰国してから一度も会えず、お互い違う人生を歩んだカップルももちろんいたであろう。目の奥に焼きついた相手は年老いることなく、いつまでもあのときのまま。いつだって恋の悩みはあるのだ。出会えなくて辛いこともあれば、出会って恋に落ちて辛い想いをすることもある。

性の指南書に載っているおまじないは時代を反映している部分もあると思う。都市伝説のようなおまじないもあるかもしれないが、多くの人の願いや思いが集まり自然と生まれたのだろう。当時の読者も笑いながら「このおまもり効くのかなあ」なんて言ってたかもしれないし、こっそり試したのかもしれない。

歴史的なものは高尚に見がちだけど、今回紹介したような世にも奇妙なへんてこ無駄知識もあるのだ。時代のおもしろい「あそび」の部分を見ることで、自分の気持ちにも少し「あそび」ができたら嬉しい。家族や友人、遠距離中の恋人にも是非シェアを。はなしの延長で自分の知らない新たなムダ知識が得られて、生活がさらに面白くなるかもよ。

楽しい時間ってそういうもの。

Text/春画―ル