その、きちんとしたイメージが一瞬にして消え去るのが「酔っちゃった発言」なのです。酔っ払うと人間はだらしなくなります。飲み物をこぼしたり、スマホを紛失したり、転倒して流血したり、恥ずかしいツイートをしたり、ゲロを吐いたり……etc。例を挙げるとキリがないほどです。これら総じて、女性がだらしなくなることが、男性にとって親近感に繋がるのでしょう。

そしてその親近感が、思春期の合唱コンクールでインプットされた「女子とは、きちんとすることを強要する生き物」というトラウマを払拭してくれるのです。なぁーんだ女子にも実はだらしない部分もあるのだ、と。

きちんとした女性には、将来的に結婚して夫婦になったとしても、「会社や上司への不平不満をこぼしたら叱られそう」と、愚痴ひとつこぼせないイメージしか湧かないでしょう。逆に、だらしない部分もある女性なら、俺だってだらしない振る舞いをしても受け入れてもらえると、安心できるのです。

「水清ければ魚棲まず」という諺があります。清い水すぎると、魚にとってエサとなるプランクトンも繁殖しないうえ、大きな魚から身を隠すこともできません。多少、濁っているほうが魚にはちょうどいいのです。男性にとっても、きちんとした清らかな女性よりも、少しくらいだらしない女性のほうが好ましいのでしょう。ゆえに、「酔っちゃった発言」は、だらしなさをチラ見せできるので有効なのです。

Text／菊池美佳子
初出：2020.06.01