女性向けAVに現れる料理シーン

 SILK LABO作品のドラマパートでは、何らかの形で料理シーンが登場することがよくある。
しかし、女性だけが料理している作品は少ない。
卒論のために私が視聴した、『ファインダーの向こうに君がいた』から『…because Egoist』までの60作品のうち、そういう作品は『繋いだてのひらから伝わること』『クロスロード』だけだったと思う。

 ではどんな料理シーンがあるのかというと、まずカップル2人で料理するパターンがある。同棲していたり、おうちデートだったりするわけだが、たとえば『東京恋愛模様』の小田切ジュンパートがそれだ。

服部恵典 東大 院生 ポルノグラフィ 研究 東京恋愛模様 小田切ジュン 『東京恋愛模様』

「ソース飛んじゃうよ!」「だいじょぶだよ、それにパスタはいっぱい絡めた方が美味しいんだから」なんて話しながら2人でお昼ごはんを作っている。
たしかに、小田切が真っ白なシャツを着ているので、汚れてしまわないか見ていてそわそわする。
ちゃんとエプロンをしたほうがいいと思うのだが、画像を見てもらえば分かるようにエプロンで守られているのはちんこの辺りだけだ。

 あるいは、彼女がいつも料理してくれるお礼に彼氏が作ってあげる『One’s Daily Life season1.Gift to you』などもあるが、もう少し料理慣れしたものだと『恋するサプリ -年下のカレ-』がある。
年下なのにしっかりものの彼氏(月野帯人)に主人公は甘えてばかりで、朝食もいつも用意してもらっているらしい。
主人公はある晩、ズボラでだらしない自分を反省するのだけれども、結局セックスの翌朝も月野がいつものように朝食を作ってくれていて、しかもダメな自分をダメなまま愛してくれる。夢のあるストーリーである。

 もはや男性の料理の腕前がプロ級の作品もある。例えば『デリシャスタイム』はレストランが舞台だから、当然女性シェフだけでなく男性シェフがいる。
さらに『Touch the Heart 一徹』撮り下ろし作品「Grow Up」は、元シェフの彼氏が主人公の女性に料理を教えてくれるのだ。

 以上のように、女性こそ料理上手であるべし、という保守的な性別役割分業意識は、SILK LABO作品ではほとんど見られない。

 男性登場人物も料理する、というこの演出は、「料理は女だけの仕事じゃない! 男女平等!」というPC(ポリティカル・コレクトネス、政治的正しさ)への配慮なのだろうか。
もちろん、それがないとは言わないけれども、おそらくそれだけではないだろう。

 たとえば、SILK LABO作品ではコンドームを装着するシーンがほぼ必ずあるが、これは元々「AVっぽいセックスじゃなく、もっと普通でいいじゃないっていう気持ちや、『避妊はちゃんとしましょうね』という啓蒙として入れてた」という堅苦しい理由だったが、「それが『女のコのことちゃんと考えてくれてて優しい!』と、思わぬ萌えポイントとして受け入れられてしまって(笑)」とプロデューサーの牧野江里が語っている(参考)。

 男の料理シーンの多さもおそらくは、「彼氏が料理上手だと素敵」というもっと素直な感情が由来しているにちがいない。
実際、国の統計を見ても、パートナーの家事能力が高いと嬉しいという女性は非常に多いのだ。