目が合うのは嘘くさい?

 原因ははっきり言ってよく分かっていないのだが、AVを視聴する女性は、前回指摘したようなカメラ目線の嘘くささが気になってしまうことが多いようだ。
たとえば「SILK LABO」の牧野江里は、ライター雨宮まみ「『女性向けだから、男の裸を中心に見せる』という発想にはなりませんでしたか」という質問に答えて、次のように語っている。

 男性向けのAVのジャンルで『主観モノ』という、女優さんとセックスしている男の主観目線で撮影して、女優さんがカメラを見つめて、まるで自分に話しかけているかのように話しかけたりいろいろしてくれたりするものがあるんですけど、それを男優さんでやったことがあるんですよ。

 でも、けっこう女は『この人、撮影現場でカメラに向かってこんなこと囁いてたわけ?』とか冷静に考えて冷めちゃうんじゃないかと思えてきて、男中心にではなくシチュエーション全体を見せる自然な撮影を心がけました。

(太字筆者、「特集『女性向けAVの現在形』:アダルトレーベル『SILK LABO』プロデューサー・牧野江里 インタビュー」より)

 ここで牧野が言及している作品は、おそらく2010年12月発売の『Eyes on you 鈴木一徹』である。
この作品では、5分40秒時点から、次のチャプターが始まる31分10秒までの約25分30秒間は、ほぼ女性主観映像である。

 2人で料理を食べるシーンなどが終わった14分40秒以降をひとまとまりの性行為シーンだと考えると、実に約16分30秒ものあいだ一徹と視聴者の間に視線の蜜月は続くことになる。

 しかも、キスシーンとフェラチオシーンでは、前回指摘した例の「キュビズム的視線」、つまり同性(ここでは女性)の身体を客観的に眺めながら、しかし異性と「主観」でばっちり目が合う構図が現れるのだ(逆に言えば、キスシーンとフェラチオシーンにしか現れていないのだが)。

 けれども、インタビューで語られているとおり、性行為シーンでの長時間の女性主観、キュビズム的視線は『Eyes on you 鈴木一徹』以降SILK LABO作品から姿を消している(加えて言えば、手淫で射精して精液が映るシーン、男優のオナニーシーンがあるのもこの作品だけである)。

 女性向けAVでは、女性主観の映像が全くなくなったわけではないのだが、男性向けAVよりは圧倒的に少なく、あったとしても性行為未満のイチャイチャしたシーンばかりなのだ。