3Pのやおい・BL性

 男性向けAVの3Pがどのようなものなのかを説明するのは、慣れ親しんだものであるがゆえに逆に難しさがある。
だが何とか特徴を捉えようとするならば、そこでは3Pは何か逸脱的な性のあり方として提示され(といってもAVに現れるプレイとしてはごく一般的だけれども)、画面にはちょっとした緊迫感というか、淫らさを追い求める強迫感が滲んでいるといえると思う。
男性は「そう言われても、別にふつうじゃないかなあ」と感じるだろうが、少なくとも女性向けAVの3Pと見比べてもらえれば、何となく私が言ったことを実感していただけるのではないか。

東大院生のポルノグラフィ研究ノート 服部恵典 東大 院生 東大院生 ポルノグラフィ 研究 『Addictive Triangular』

 女性向けAVの3Pは、ずいぶんと和やかだ。ユーモラスですらある。
『Addictive Triangular』で、一徹が川上ゆうとのセックスを有馬芳彦に目撃されたときに笑みがこぼれたり、あるいは『Suddenly Triangular』で、2人がセックスし始めたことに気付いて寝たふりをする倉橋大賀にブラジャーが降ってきたり、寝たふりがバレたりするシーンなど、コントのようだとさえ感じる。

東大院生のポルノグラフィ研究ノート 服部恵典 東大 院生 東大院生 ポルノグラフィ 研究 『Suddenly Triangular』

 おそらく、男2女1の3Pは、女性にとって逆ハーレムでもあるが輪姦っぽさもあり、その恐怖感を打ち消す必要があるのだろう。
作品は基本的に明るい調子で続き、登場人物3人が女性を真ん中にした川の字で談笑するシーンで、幸福感に包まれたまま終わるのだ。

東大院生のポルノグラフィ研究ノート 服部恵典 東大 院生 東大院生 ポルノグラフィ 研究 『Addictive Triangular』

 なお、ストーリーが終わったのち、『Suddenly Triangular』『Addictive Triangular』ではスタッフロールと同時にNG集が流れる。
前者では月野帯人がムーミンの股間を撫でさすってしまいNG、後者では月野が北野翔太に「もっとしてよ翔、俺にも!」と言ってしまいNG。
どちらも、男性同士の性愛を深読みさせる。

 何もNGシーンだけではない。
『Suddenly Triangular』前半パートは、川の字の真ん中に寝る女性登場人物を差し置き、「俺、タクミ好きだもん」「何言ってんだよ(笑)」という台詞で終わるのだ。

 私は初めて見たときから、視聴者の深読みを誘う女性向けAVのこのやおい・BL性には驚きっぱなしだ。
これはいったい何なのだろう。
社会学の理論を使って、何とか、もっともらしい説明を考えてみよう。