「愛がある中出し」なんて幻想

 そしてもう一つ思うのは、インタビュー内でも少し触れた「本当にコンドームが必要な層に十分な情報が届いてないんじゃないか」ということ。

 私が中高生だった1980年代は、エイズ問題がバーンとクローズアップされた時期でした。そのせいか、学校の性教育でも「ゴムつけないとダメ!」みたいなことをガッツリ言われていたんですが、今は社会がそういう状況に慣れてしまったのか、みんなそれほど気にしてないように見えるんですよね。(ちなみに統計によるとHIVの感染率は年々上がっています。)

 さらに気になるのは、ここ数年、AVやマンガなどのセックスメディアでは「中出しモノ」が飛躍的に増えてきていること。しかも「愛がある中出し」みたいな扱い方がされちゃってるからドキドキしてしまいます。
もちろん私も中出しAVは好きだし、興奮してオナニーもする。でも、それはAVやエロマンガがフィクションで性のファンタジーだとわかっているから。
もし、何も知らない中高生が「愛してるからナマでセックスしてもいい」という間違ったファンタジーを真に受けてしまったらと思うと、なんだか恐ろしい。

 中高生が読むティーンズラブ漫画やティーンズラブ小説には、コンドームをつける場面って出てくるんでしょうか。

 もちろん、中出しAVが性のファンタジーだとわかっているはずの大人でも、「生セックス=愛がある」というイメージから完全に逃れられたわけじゃありません。
「本当に愛してるから、中出ししてもいいよね?」
好きな男に抱きしめられながらそう言われて、間髪入れず「ダメ!」と言える女性が、いったいどれくらいいることか。
「愛がある中出し」って幻想こそが「コンドームつけない問題」の最大の敵なんじゃないでしょうか。

Text/遠藤遊佐