「20年ぶりにゲイコミュニティに復帰したら、自分の居場所は無くなっていた」 

 長い年月を共にしたパートナーと離婚し、50代から独身のゲイ男性としてゲイコミュニティで新しい恋を探している友人は大きな壁に直面している。
年齢を口にしただけで男に逃げられて、積極的にアプローチされたと思えば金目当て。ゲイバーやクラブに行っても若い人ばかりで、自分と同じ年齢のゲイにはほとんど出会えない。
80年代からゲイコミュニティのために居場所を築く活動に関わってきたにも関わらず、彼はそのゲイコミュニティの中で孤立している。トロントのゲイコミュニティは若い人たち中心の場所になってしまったからだ。

 その移り変わりを説明する理由はたくさんある。
80年代から90年代にかけてエイズ危機が直撃した年上の世代はごっそりゲイコミュニティから欠けている。同性婚が認められて、グラインダーのようなアプリが登場して、物理的なゲイコミュニティの必要性もどんどん減っていった。
仕事に就いて、パートナーを見つけて、郊外に引っ越して、ゲイコミュニティとの関わりは年に一度プライドパレードを見るくらいのゲイライフスタイルが一般的になってしまった。
いつも人で溢れていたチャーチストリートは昔と比べると随分寂しい場所になった。

 自分が年老いたときにサポートを得られるゲイコミュニティは期待しない方がいいのかもしれない。
若さというステータスを失ったときに居場所を見つけられずに孤立したくない。そんな不安が老いることへの恐怖心を駆り立てているのだろう。
それならば、できることは二つしかない。いつまでも若いままでいるか、老いた自分を支えてくれるようなコミュニティを築こう。
さて、今のうちに整形外科のアポイントメントでも予約しておこうか。

Text/キャシー

次回は<愛されるために自分の弱さを曝け出す>です。
子供のころにいじめられた経験を思い出せば、たとえ今できたはずの恋人にだってすべてをさらけ出すことは怖くてたまらない。それでも少しだけ開示することが意味をなすのかもしれない。