そもそも、恋人同士になるというのはどういうことなのだろうか。
文化や価値観によって答えも違ってくるとも思うが、根本的な部分はお互いに恋愛関係にあると同意している状態である。
もちろん、時と場合によってはふたり以上の場合もあるし、恋愛関係の中身も外見も人それぞれである。
受動的な日々を送っていればこんな問いかけなんてする必要もないが、実はとても大切なことだ。

 それでは、どうすれば恋人同士になったとわかるのだろうか。
相手に率直に聞けばいい。そんなことを口にするのは少し気恥ずかしいかもしれないが、相手の言動の一つ一つを必要以上に深読みして推測を重ねていくより遥かに簡単に答えが出るはずだ。

 今付き合っている彼氏との初デートを今でもよく覚えている。
正式にデートのお誘いを受けたあたしは、普段より頑張って着飾って彼とディナーを楽しんだ。その後、家でお茶を飲みながらたわいもない話で盛り上がった。
そのまま曖昧にデートを終わらせるのは嫌だったので、タイミングを見計らって真剣な話題に切り替えた。もう散々恋愛に失敗してきたからこそ、自分や他人の気持ちで遊ぶなんてことはしたくない。だから、これでもかってくらい真っ直ぐに質問した。

「ねぇ、どうする?またデートする?」

 そんなストレートパンチにビックリした彼は目をまん丸にして頷く。

「じゃ、こうしてデートをしている間、他人とのセックスはあり?なし?」

 少し考えてから、首を横に振る彼。

「今夜はセックスする?それとも次のデートまで待つ?」

 そのままベッドインする覚悟はできていたが、彼は純情なのか猫を被っているのか次まで待つことに決めた。
そんな怒涛の尋問に耐えた彼は、ホッとしたのかグイッとお茶を飲み干した。冷静を装っていた自分だったが、ぎこちない会話がやっと終わって心底安心した。

「5センチ中に入るまで彼氏じゃない!」

 とある友人はいつかこんな名言を残した。
この下らない名言は小さい物差しで恋愛を測定する無意味さを教えてくれる。キスしたから、セックスしたから、きっと恋人同士になったと頭の中で妄想を繰り広げる暇があるなら聞いてしまえ。好きなら好きと、嫌いなら嫌いと、ハッキリ言えばいい。思いっきり当たって粉々に砕けてしまえ。
本当、恋愛はそれくらいハッキリしてた方がいいのに。現実は決して甘くない。

Text/キャシー