「答えを言わない監督」とは

ジムノぺディに乱れる 日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト 行定勲 峰なゆか 行定勲監督

―監督は、古谷のようなタイプではないのですか?

Y:違いますね。でも、古谷のような「答えを言わない監督」に対する憧れはあります。

―答えを言わない監督?

Y:演出の答えを言わない監督です。
たとえば、撮影中、女優に何度も注文をつけてやり直させる。それってムカつくじゃない?でも、「私にこれだけ手をかけてくれる」とも言える。愛憎がどんどん強くなるんですよ。
そのまま女優を追い込んで、最後に「今までのことは忘れて、自由に演じてごらん?」と囁く。それでOK出されたら、絶対に好きになっちゃうよね。

僕は反対に「はい、こうやって」とテキパキ指示出してしまうので、演者は「答えを全部言われてやらされちゃったな~」って“ヤリ逃げされた”みたいな気持ちになってしまうかもしれませんね。

M:監督のお話を聞いてると、古谷に対してムカつかない理由がわかりました。監督は「色んな女とヤレていいよね」って気持ちじゃなく、「こういう男っていいよね」と憧れをもって撮られてるんですね。

Y:そうそう。その思いが伝わらないと、「なんでこいつがモテるの?」と観客に疑問を持たれちゃうんですよね。

―たしかに「モテる理由」はわからないけど、「モテる」ことには疑問は持ちませんでした。
逆に、監督と古谷の共通点はあるのでしょうか。

Y:古谷はおそらく、会った女性ほとんどと関係を持ってるんです。それって、相手に「好き」も「嫌い」も言わないから、誰とも揉めずに成り立ってるんですよね。こういう男は、女性のいいところしか見ないんです。
僕は、容姿に自信がない人が好きなんです。人がもつコンプレックスを「良いな」と思えるようになると、全ての女性が素敵に思える。そこが共通点ですね。