こじらせている余裕がなかった

アル:あと男らしさや女らしさで悩まなかったのは、もっと大きな悩みがあったからじゃないか?

K:うん。僕はとにかく父親が怖かったから、それ以外で悩む余裕なかったというか。「どうやってこの家から脱出しよう?」ってそればっかり考えていた。
(解説/両親の離婚後、中3から弟は父と暮らし私は母と暮らした。父はDVで母はアル中、両家庭ともネグレクト。絶縁後も父にお金を騙しとられたりと色々大変でした)

アル:私も「このままでは母親を殺すか自分を殺してしまう、早く脱出せねば」って思っていた。で、18歳で家を出たら「学費や生活費を稼がねば」って現実問題があったから。
生きるのに必死で、女性性とかこじらせる余裕なかったかも。

K:僕もバイトと勉強でギリギリだったけど…でも風呂なしのボロアパートに住みながら、すごい開放感を感じていたよ。
原付の音がすると父親が家に帰ってくる記憶が蘇って、気分悪くなったりしたけど。

アル:おお、わかりやすいPTSDの症状だなあ! 

K:でも「もう一生父親に会わなくていい」って心底ホッとした。
18歳から会ってないって話すと「冷たい、親が可哀想」とか言われるけど。「どっちが可哀想なんだ」と思うけど、わからない人にはわからないから。

アル:そうね。これだけ虐待のニュースがあっても「子どもを愛さない親はいない」とか、自分の常識を押しつけてくる人はいるから。
私も母が亡くなった時にホッとしたけど、「もう火山の噴火に怯えずにすむ」って感覚は、経験した人にしかわからないんだよ。
『母が死んでホッとした』とコラムに書くと「最低ですね」とかコメントもつくけど「救われました」って感想もいっぱいくるから。どんどん書いていこうかなと。

K:僕はこういう話、姉以外とはしないからなあ。

アル:したくないの?

K:いやべつに。聞かれないからわざわざ話さないだけ。

アル:だったら話すといいよ。すると「実はうちの家族も…」って打ち明けてくる人が多いから。
「誰かに話したいけど、引かれそうで話せない」って苦しむ人はいっぱいいるんだよ。そういう人は、話すことによって救われるから。

K:そういえば、大学の同級生に「ゲイでMだ」ってカムアウトされた時に「おまえは引かなそうだから話した」って言われた。
その彼に誘われて二丁目のSMイベントに行ったら、彼は乳首に針を刺されて、天井から吊り下げられていたよ。

アル:あれすごいよね。複雑な形に縛られて吊るされて、シルク・ドゥ・ソレイユみたいだよね。 

K:シルク・ドゥ・ソレイユ(笑)。

アル:よし、最終回なんでまとめよう。
親には恵まれなかったが、気の合う弟がいてよかったなと。我々の気が合うのは、ジェンダーフリーかつネグレクトの成果かもしれないので、まあ結果オーライってことで。
とりあえず、飲みに行くか!

K:ハイ、行きましょう。

―――今後も多彩なゲストが登場します♪

アルテイシアさんが恋愛と結婚の極意を語る『恋愛デスマッチ』を当連載と隔週で更新しています。あわせてお楽しみください!

Text/アルテイシア

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