本番目前は桜の開花を待つようなもの

ヘンテコリンな比喩ではあるが、僕は開花宣言あたりの時期が一番好きだ。何しろこれから美しい光景が見られ、花見をしたり、ただ道を歩いているだけでも楽しい日々が来る。だが、ひとたび満開になってしまうと、あとは散るのを待つばかりになってしまい、寂しさが増していくのだ。

セックスにしても、当然行為の最中も大好きなのだが、一度始まってしまうと、あとはラブホテルの残り時間との勝負になる。そしてホテルを出る前、慌てて服を着るときはまだ花は咲いているものの、「それじゃーね」と別れて一人電車に乗っているときは葉桜を見ているような気持ちになる。

このように、期待に胸を膨らませ、本番を目前にしているときが一番好きなのである。かくして当日がやってくる。この日、最大の問題はやはり【1】ホテルに互いに気持ちよく持っていくためのスマートな会話の展開【2】アソコを元気にするために何を食べるか……である。

そして、彼女と飲み屋に入り、その姿を目の前にし、男はまもなく勃起をすることだろう。会話は若干上の空になり、あとはどのタイミングで切り出すかを考えることとなる。そんな状況を察し、あなたもその気があるのなら、男が「この後ホテル行きませんか?」と言いやすくする助け舟を出してもいい。「こうして2人で会うの、4回目だね。私たち気が合うね」ぐらいで構わないです。

Text/中川淳一郎