ナンパによる具体的な被害

「ナンパメソッド感の薄い、ガチ恋っぽいナンパは本当に純粋な気持ちで声をかけただけかもしれないじゃないか! それを必要以上に怖がって逃げるのは、勇気を出して声をかけた人に対して失礼!」という意見もあると思います。

けれど、男性から声をかけられたとき、私は「最悪の場合、殺されるのでは」と思います。そんな大げさなと思われるかもしれませんが、これは私にとってごく自然なことです。そして、他の女性にとってもおそらくはそうだと思います。

相手は私より力も強く、身体の大きな男性です。何か反応したら逆上して暴力を振るわれるかもしれない。あるいは、逃げても追いかけてくるかもしれない。追いつかれてしまったら、私が逃げたことに腹を立てるかもしれない。だからといって下手に愛想よくしたら、好意があると思われて付きまとわれるかもしれない。断っていることが通じなくて離してくれないかもしれない。悪い想像はいくらでも出来ます。だから、曖昧な言葉で濁して、追いつかれないように逃げることしか出来ないのです。

女性を使った一種の娯楽としての「ナンパ」は言語道断の犯罪行為ですが、それが純粋に「お近づきになりたい」という気持ちの元に行われる声かけだったとしても、それは女性に限りない恐怖を与える行為です。

こわいと感じながらも、「ナンパくらい軽くあしらえるのが良い女」「ナンパくらいで怖がるのは自意識過剰」と思ってしまっている女性も、絶対にがまんしなくていいと私は思います。だってどう考えてもこわいもん。

ナンパをするならこれくらい

ちなみに、いままで私が聞いたナンパエピソードの中で「それならまあ良し」と思った唯一のものは、友人が道を歩いているときに、右手に運転免許証、左手に勤務先で使っている名刺を掲げた男性に、「驚かせてすみません! 怪しい者ではないんです! 要はナンパなんですけど、コレ身分証です! 写真撮って保存してもらってもいいです! 連絡先交換してください!」と言われたというものです。

男性が予め身分を明かしてくれていたことと、必死な様子が見て取れたことから友人はその人と連絡先を交換し、しばらく付き合っていたそうです。これくらいやってくれないと、怖すぎて話を聞こうかなって思えないですよね……。

Text/こはなみみこ