写真がダサすぎた夫

 そうしてイイネを押していったなかに現在の夫がいます。彼はどの男性よりダントツで写真がダサく、発見したときは「このダサさ……!」と、意味の分からない高揚感に包まれました。観光地の土産物屋でしか見たことがない「I Love(ハートで表現されているアレ)○○(地名)」と書かれたTシャツ、中途半端に伸びた髪の襟足、そしてTシャツのロゴを分断するようにかけられた斜めがけ鞄の太い紐。正直震えました。しかし何故か、ダサさに震えると同時に「この人かもしれない」とも思いました。ダサさに頭が麻痺しただけかもしれないけど。

 それまでマッチングしてきた他の男性たちが、少しやり取りをしたらすぐに「いつ会えますか?」と聞いてきたのに対し、彼は全く私と会おうとしないところにも闘争心を煽られました。
どこそこの店が旨い、という話にまでなっているのに、なぜか「じゃあ今度いっしょに行きますか?」が出ない。「まじかこいつ」と思いながらもなんとか誘導し、初回アポを取り付けました。

 後日、なぜなかなか会おうとしなかったのかと尋ねたら、長くアプリに登録してはいるものの上手くいかず、どうせ今回も上手くいかないだろうと思ってモチベーションが低下していたとのこと。強めに押して正解でした。

 初回アポ、それなりにダサいものの写真よりは遥かにまともな格好をしていた彼に会いました。
手持ちのカードが「心にさとみ」しかない私はそれを装備していましたが、すこぶるイマイチな反応だったので早々に撤回、数々のモテ小技を繰り出すももまるで通用せず、正直「手強いやんけ……」と、モテ擬態モードでの攻略を諦め、婚活をはじめてから出したことのなかった「素の自分」を出すことにしました

 デート中、モテ小技が全く通用しないうえに、私が「ハイハイこいつもクソチョロ~」と思わずにいられたということは、すなわち彼が私を「女(やれそう)」としてではなく「ただの人間」として接していたからでは……?と思い至り、「きたか?SSR!?」と緊張が走りました。

 そして、いままでのように内心で男性を見下しながら接するのではなく、私も真面目にこの人と向き合うべきだ、と自然に考えていました。

 彼と会って初めて、いままでマッチングした男性たちが私を「人間ではなく“女”」として扱っていたのと同じように私も男性を「人間ではなく“クソチョロい男”」としてしか見れていなかったことに気付きました。
その日は私が心のさとみを捨てて、素で彼に接し始めたあたりから大いに盛り上がり、彼の「つぎはいつ会えますか?必ず会いたいです」という確かな手ごたえを感じさせる言葉で終わりました。

 住んでいた場所が近く、仕事終わりに軽くお茶したりするのが可能だったため初回アポからほぼ一日おきに会い、一週間後にはとりあえずお試しで付き合うことになりました。

 とはいえ彼は絵に描いたようなオクテ男性であり、なんでもマジレスして理詰めにするタイプだったため、付き合い始めることになる出会って一週間目のその日に「まだお互いそんなに好きではないですよね?本当に付き合ってもいいんでしょうか」と言われ、まだ告白もしていないのに私がフラれたような状態になりつつも「とりあえずお試しってことでいいんじゃないでしょうか?お互いまたアプリで相手探すのも面倒でしょ」と半ば無理やり押したのでした。

 しかし、冒頭にも書いていた通り、私は毒親育ちでADHDでレズビアンで婦人科系疾患を治療中であることなど、生涯の伴侶となる人には打ち明けないといけない要素がたくさんありました。

 次回からは、交際開始から結婚に至るまで、様々な問題をいかに話し合い、解決とまではいかないもののお互いにとっての着地点を見つけていったかについてお話できればと思います!