無職になってからというもの

 この言いたいことというのは「いい機会だから言わせてもらうけど」という、説教である。
こちらにとっては説教を食らうのに良い機会などないのだが、何せ我々は平素一日3分ぐらいしか一緒にいないので、夫にとって、誕生日や結婚記念日の会食というのは説教チャンスなのである。

 何か怒られる覚えがあるかというと、もちろんある。

 特に無職になってからは「確かに家事分担はそんなに変えなくていいとは言ったが、それにしても、しかし、まさか、なあ?」とか「せめて俺が家を出るまで二度寝に戻るな」とかいくらでも怒られ要素はある。

 そう言われたら「おっしゃる通りです」と形だけの謝罪会見をするしかないが、そんな私でも一つだけ言われたくないことがある。

 「そろそろ外で働く気になった?」

 これは先日、本当に夫に言われたことだ。さすがの私も「てめえ本気で言ってんのか」と口には出さなかったが3日ぐらい怒っていた。
まるで私が家でずっと遊んでいるかのようではないか。確かに私は無職だが、このように公園の砂場から砂鉄を磁石で集めるような仕事もしているし、そもそも会社と砂鉄集めの両立に限界が来たから会社を辞めたのだ、と言うのは嘘で、ただ会社にバレたから辞めたのだが、それでもキツかったのは確かである。それなのにまだ外で働けとは、鬼か、このナイトメア。

 このように大そうご立腹だったのだが、考えてみれば私は夫に己の仕事の話を一切しないので、夫は私が毎月どれだけの量の砂鉄を集めていて、それがどのぐらいの収入になっているとか全く知らないのである。

 しかも庭の草は依然刈り取られる様子はなく、部屋は汚いし床は腐っている。
何をやっているかわからない以上、毎日遊んでいると思われていても仕方がないし、実際毎日遊んでいないかというと割と遊んでいる。

 そういうことを言われたくないなら、まず自分はこれだけ毎日砂鉄を集めていて、それがこれだけの金になっている、という説明が必要である。それをした上でまだ外で働けと言うなら「このナイトメア野郎!」と怒ってもいいだろう。

 だがその説明をしたくないのである。
私の仕事は飯が不味くなるような暗いニュースしかないので純粋にしたくないし、収入も不安定すぎて逆に「やはり外で働いた方が」となる可能性が高い。
私自身も無職になって改めて「やっぱり外で働くのが一番確実だな」と思ったので、これは間違いない。
では何故外で働かないか、というと仕事があるとか収入があるからとか関係なく、やっぱり「外で働きたくない」からだ。

 よって夫にまた上記のようなことを言われたら説明も釈明もなく潔く「俺はクソ嫁だから二度と働かねえ、残念だったな」と言うことにする。

次回は<相手のためと思っても違う場合もある「家事以外の役割分担」>です。
夫婦ふたりで共同生活を送るうえで大切になってくるのが役割分担。カレー沢さん夫妻の場合は二人のお金の使い道に関しての「決定権」の役割があるそうですが…。

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