私より夫の方が心配だ

自堕落な私の方が病(ビョウ)を発症する率が高そうだが、実は心配なのは夫の方である。

ガン家系なのもあるが、結構な酒飲みなのだ。飲みに行くことも多く、休日は缶ビールを4.5本開けていることが多い。
片や私は、クスリやたばこはやらず、酒もほとんど飲まない。本当にガチャにさえ出会わなければ、という惜しい人生なのだ。

しかし、酒には突発的にハマることがある。二十歳前後の時酒が飲める年になったのと「退廃感」に憧れ、意味もなく酒を飲んでいたのだが、結果的には破滅する前にやめてしまった。この時感じたのは「廃れきるのも結構大変だし才能がいる」ということである。やはりそれをやり遂げた明治の文豪の方々とかは根性が違う。
それ以来、酒はほどほどだったのだが、最近ストロングゼロにハマっていた。

ストロングゼロと言えば今日本で一番アツい合法ドラッグだ。ストゼロのすごいところは、他の合法ドラッグは、合法と言いつつほぼ違法なのに対し、マジで合法なところである。しかも安い。

そんな「コスパ最高リピ確定、小生の愚息も大満足、文句なしの☆三つ」であるストゼロなのだが、確かに「イイ」。
どう「イイ」かはシャブの良さを言語化できないのと同じで「飲んでみるしかない」のだが、あんまり「イイ」ので、平素、夫に何かを勧めることがない小生もつい「ストゼロはいいぞ」と言ってしまった。

それ以来、夫は私に定期的にストゼロを買ってくるようになってしまった。
前から夫は、私が飲める缶チューハイなどを買ってくる人であった、どうも夫は自分が酒飲みなので私にも飲んで欲しいと思っているようだ。
我々にとって「布教」とは、漫画やDVDを貸すことだが、実は夫もずっと布教活動をしていたのである。

しばらく喜んで、ストゼロを常飲していた私だが、前述の通り「破滅するにも才能がいる」ため、才気に欠ける私は「このままではヤバい」という凡愚らしい、クソつまらないことに気付いてしまったため、ストゼロを飲むのをすっぱりやめてしまったのだ。
しかし、その後も夫は「新しいのが出てた」など、コツコツストゼロを買ってきた。

善意である。
しかし、飲まない物を買ってこられても申し訳ないので「私はそんなにお酒を飲む方ではないのだ」と改めて伝えた。
すると夫は、その時すでに無職になっていた私に対し「せっかく、昼間から飲める立場になったのに?」と言った。

定年後、やることなくて朝から酒を飲み、即死する奴の発想である。私より格段にしっかりした夫であるが「破滅の才能」はどうやら私より上である。
ちなみに、飲み手のなくなったストゼロは夫が飲んでいる、自分はシャブから足を洗ったが、自分がそれを教えてパートナーは今もキメ続けている、という最悪の状態である。

女の趣味に対し「どうせカレシの影響でしょ?」などと言ったらハリウッド級に爆発炎上な世の中だが、実際パートナーの影響や勧めで「はじまってしまう」こともあるのである。

例え「イイ」ものでも、依存性のあるものはパートナーに勧めないのが愛かもしれない。

次回は<年に一度しかないが手加減してほしい「最近買ってよかったもの」>です。
年に一度しか来ない日を加齢に憂うか、推しからのメッセージに胸を弾ませるかは自分で決められる。ということで今回のテーマは「最近買ってよかったもの」です。

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