どうにもならない黒歴史

それより性質が悪いのは、誰から見ても黒歴史を黄金時代として思っている奴である。昔の犯罪を「武勇伝」として語っている奴などその典型だ。

犯罪までいかなくても「勘違いによる黒歴史」というのもある。
「自分は世界を救う七神帝を守護する巫女だと勘違いしていた」というのは別にいい。むしろそういう夢小説は30過ぎても読むし書く。

だが、たくさんの男とヤるのがモテでありイイ女だと勘違いして浮気を繰り返したり、自分は毒舌キャラで通っていると、どこも通ってないのに勘違いして、人を傷つけるようなことを言いまくっていた、というのは「黒歴史」である。

そういう黒歴史がある場合は「もうしないと」と誓って、黙っておくしかない。間違っても「あん時はアタシも若かったからさ」と喜々として語ってはいけない。

もちろん、昔「ヤリマンビッチ部主将」だった女が、当時のことは一切なかったことにして、今じゃすっかりいい奥さんぶってフェイスブックにガーデニングの写真を載せているのが許せん、という気持ちもあるが、そんなことを言ったら「人は一切やり直しや軌道修正が許されない」ということになってしまう。
人生という初見ステージを残基1でノーミスクリアできる人間などそうそういないだろう。

しかし、一番どうにもならないのが「他人にやってしまった黒歴史」だ。 これは自分の反省など一切関係ない「昔は盗んだバイクで走りだしたりしていましたが、今ではすっかり更生して二児の父です」、などと言っても、当時バイクを盗まれた側からすると「バイク返せバカ」である。

結局、その後どうするかは別として「やってしまったこと」は消せない。
過去の問題発言を取りざたされた時「昔のことで今はそう思ってない」と主張しても多くの場合通らないのである。
よって、もう「若気の至り」というカードも使えない年になったら極力「やっちまわないよう」気をつけるしかない。

ある意味ノーミスが求められる、厳しい期間だが、そのうち「ババアのすることだから」もっと行くと「もうすぐ死ぬ人間のすることだから」と全てを許される日がくるので、今は辛抱である。

ちなみに、夫だが、昔、走り屋的グループに所属しており、チーム名は「ナイトメア」だったという。

そう言った夫の顔には全く恥が浮かんでいなかったので、やっぱり「こういう態度」が人生に無駄な黒歴史を作らないのだと確信した。

次回は<完無視が完全に一致している「私と夫の似ているところ」>です。
結婚生活は、夫婦が似た者同士のほうがうまくいくのか、足りないところを補い合う似てない者同士のほうがうまくいくのか……。カレー沢薫さんの今回のテーマは、「私と夫の似ているところ」です。

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