1000円事件

 スーパーにゴリラと2人で買い物に行った時の事だった。

 食費担当であるゴリラの持ち合わせが足りなかったため、1000円を貸してくれと言われた私は「いいよ!」と快く財布から現金を出した。

 その時、ゴリラは急いでいたのか、1000円札を私の手からバッと奪い取ったのだ。

 私はすぐさま「ヴェ〜ン!」と声を出して地団駄を踏み抗議すると、ゴリラは「え!何!貸してくれるって言ったじゃん!」と驚いた。

 彼はどうやら、私が現金を取られたことを不満に思っているのだと勘違いしていたようだった。

しかし私は「バッって取ったァ!!!!」と不満の理由を伝えたのだった。

 そうなのだ。

私は1000円をとられたことが不満なのではなかった。

1000円の取り方が不満だったのだ!

 いつもこんな時は「ねこちゃん(私のことである)ありがとー!借りるね!」というやりとりがあるところ、急いでいたゴリラはそれを省いたのだ。

 むしろ、その思いやり(?)があれば貸すのが1万円でも良かった。

 もっと言えば、返ってこなくても不満はないのだ。

 お金を貸すという結果は同じなのに、私は感情面のケアを重視していたことが分かる出来事だった。