はじめて知るお墓の世界

旦那と結婚したとき、旦那の実家が宗教団体であることと(詳しくはこちらのコラムをご参照ください)、私も旦那も信者になるつもりは今後もない、という点で、嫁にいったとはいえこの家の墓に入ることはないだろう、と覚悟していました。
「じゃあ、死んだらどのお墓に入るのかな…」とぼんやり不安に感じていましたが、それは、死後の魂の行方が気になるとか、そういうスピリチュアルな意味ではなくて、死んだ後に誰かの手を煩わせたり、お金を使わせるのは嫌だなあ、という類の不安でした。

生前、嫌なことはやりたくない! と会社勤めもせず好き勝手に生きてきたくせに、死んだら息子に負担をかけて墓を買わせるなんて超絶ダサい。いっそ墓なんか要らないからどっかに散骨してくれよ、とも思いましたが、それが違法なのかグレーゾーンなのか、調べてもいまいちスッキリしないのです(ケースによっては葬儀会社が代行すればセーフな模様)。

アメリカではディスニーランドに散骨してくれ、と希望する人が後を絶たないそうで(わかる)、遺族は違法だと知りながらこっそりパークに遺灰をまき、お墓まいりの代わりに遊びに行くらしい(超わかる)。パーク側でもそれを「迷惑行為」だとしながらも、夢の国として表立って禁止することはできず、清掃員が遺骨の破片を見つけたら速やかにゴミとして処理するとか。ちなみに一番遺骨が発見される場所は、ホーンテッドマンションだそうです(わかりすぎる)。

そもそも私には、「骨まいて」と思えるぐらい好きな場所ってあったっけ。サーファーだったら海、シネフィルなら映画館、アニヲタなら秋葉原、とかあるんでしょうけど、私には人生かけて好きになった場所なんて思い浮かばない。好きな国や地域もあるけど、その土地自体に固執しているわけじゃなくて、大切な人たちとそこでつくった思い出が重要なんだもん。

つまり、私が生涯ずっと好きって言えるのは家族と、数少ないけど数人の親しい友人くらい。その辺の人たちが、気が向いたら寄ったり(寄らなくても思い出したり)できる場所にお墓を建てておけば、スピ的な意味で「そこに私はいません」だとしても、OKなのではないだろうか。
そしてお墓というのは、一度買ってしまえば死後もずっと使える(当たり前だ)。社会的には底辺なフリーランスの私でも、大事な一人息子に家とお墓を遺すことができるのです。わっしょい。

お墓リサーチと霊園めぐりを始めたところ、知らなかったことが山ほどあったのでザッと並べてみますね。

・ お墓を継ぐ者は一家庭となるため、長男以外は実家の墓に入ることはできない(未婚で子供なしなら入れるなど例外もある)。

・ 一度買ったら子孫が途絶えるまで使える。

・ 子孫が途絶えたら「墓じまい」といってお墓の土地を返還する。その場合は合同墓地に移され供養される。

・ 1つの墓に収められる霊の数は墓のサイズによって決まっていて(遺骨は1霊2霊と数える)、その数をオーバーしたら古い順から骨壺を取り出して墓の下の土に還していくので、血筋が途絶えない限りは物理的に何代でも継いでいける。

・ お墓は最初に土地を買って(正式には土地そのものを買うわけではなく永代使用料を払って文字通り永久に使える権利を買う)、墓石を建てれば、あとは月々の管理料を支払う限りはいつまでも使える。

・ 管理料は霊園によって月々100円から2000円ぐらい。

・ 霊園は基本的に寺院が所有する土地にあるが管理会社は別だったりして、宗教に関係なく入れるところもある(一方で檀家義務がある霊園も)。

・ ペットと一緒に入れるところもある。

・ 墓石にはどんな文字を彫ってもOK。写真やイラストを彫る技術も進化してる。

・ 墓石の横や裏に建てた人の名前を赤文字で入れる(入れなくても可)。

・ 「塔婆」(お墓の後ろに立っている文字が書かれた木の札)は1本3000〜4000円。お彼岸などで供養してもらう度に新しく作る(作らなくても可)。

40代にして、はじめて知るお墓の世界。不謹慎かもしれませんが、霊園を見学するのは想像以上に楽しくて、知識欲と好奇心が満たされました。死んだら魂がどこにいくのか、そもそも魂なんてものはあるのか、私にはわからないけど、自分の骨がいつか入るであろうお墓を、自分のお金と手間を使って整えるのは意外にも至福の体験となりそうです。

うちの場合は今年14歳になった愛犬が先に入ることになりそうだから、来たるべきペットロスに備えて、お墓を検討することで図らずも今一緒にいる時間の多幸感を再認識できたっていうのもデカイ。はー。とかいって、本当はお墓使う日なんか来なければいいな!って思ってます。ダラ嫁の座右の銘は、死ぬこと以外はかすり傷! 死にたくないし、誰も死ぬなよ!

Text/ティナ助

初出:2018.11.01

次回は<クリスマスの物語に学ぶ「夫婦間の贈り物」>です。
街中がにぎわうクリスマスシーズンの到来!人に贈るプレゼントについて考えるのは楽しいですが、ティナ助さんが思い出す話があります。定番のストーリーだけど、夫婦となった今考えると少し違った見方になるようで…