”吉高由里子以上、檀れい未満”のさじ加減         

By photoskate By youhei.nitta

菅野美穂の無邪気で天真爛漫なイメージは、吉高由里子のそれと少し似たところがあります。

 プールサイドを俳優の平山浩行とともに駆け回り、「チオ」「ビタ」と言い合って背中合わせにドリンクを飲む「チオビタドリンク」のCM。
「カレがコーヒーで、わたしがクリープ♪」と歌い、テラスにいる男性に目配せする「クリープ」のCM。

 そのどれもが、吉高由里子に置き換えてみても“なんかしっくり”くるはずです。
しかし、これを吉高が演じると、男に媚びるような、男をたぶらかすような“いやらしさ”がどうしても出てしまうでしょう。

 そう、菅野美穂にはその“いやらしさ”がないのです。
“性の匂い”がしないと言ってもいい。
35歳という落ち着いた年齢のちょうどよさもポイントでしょうが、かつて、弱冠20歳にしてヘアヌード写真集を出しているにもかかわらず、その記憶と印象が人々の間からすっぽり抜け落ちているのも不思議です。

 彼女とだったら、ガード下の一杯飲み屋で肩を組みながら酒を飲みかわし、そのまま朝まで変なことには一切ならずに過ごせそうな気がしませんか?

 しこたま酔っ払った彼女は、男の私に対して無防備に顔を近づけ、きっとこんなことを言ってくるでしょう。

「お前、南北線にも東と西があるって知ってるか?」
「どうせアタシは、スコーンとチートスの違いもわからない女ですよー」
「ハイハーイ! 今からマックのポテトが揚がったときのアラーム音のマネしまーす!」
「なにこれ! アタシのひじ、今すっごいカサカサなんだけど! アタシ史上一番のカッサカサだよ!?」

 いやらしくない。
全然いやらしくないけど、なんだかものすごくカワイイでしょ? 萌えるでしょ?

 前回の文脈で言えば、「ヤりたい女」ではなく、「付き合いたい女」。
まるで「中1男子が憧れる教育実習生のお姉さん」のような、まだ具体的なエロまでたどり着かない“淡い恋心”みたいなものを刺激する魅力が、彼女にはあるのです。

 だから、男性の「菅野美穂が好き」という発言は、女性からも反感を買いません。
女性からの「好きなタイプは?」という質問に対する模範回答は、ひょっとして「菅野美穂」なのかもしれません。

 ただし、彼女が今後、「金麦」のCMの檀れいのようなポジションを狙ってしまうと、途端に女性支持も失ってしまうので注意が必要でしょう。

 吉高由里子以上、檀れい未満。

男に媚びていると思われず、なおかつ自然体で男を惹きつけるには、たいへん微妙で難しい“菅野美穂”なさじ加減が必要とされるんですね。

Text/Fukusuke Fukuda