“月9っぽいベタ”を自覚的に作り込んでみせた心意気           

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 このドラマは、若くしてITベンチャー企業を立ち上げ、時代の寵児となった男・日向徹(小栗旬)と、東大理学部という学歴を持ちながら就活に全敗している要領の悪い女子大生・夏井真琴(石原さとみ)の出会いを描いています。

 第1話の冒頭は、マネーゲームに興じる日向たちの姿をスタイリッシュでハイテンポ(でも手法としてはベタベタ)なカット割で見せるシーンから始まります。
やがて彼の会社“NEXT INNOVATION”が、いかにイケてるしヤバい最先端企業かを紹介する、情報バラエティ風のポップな映像(でもハシャぎすぎでしゃらくさい)がインサート。

 IT業界にかつてのバブルを夢見るような“トレンディ”なノリに、最初の5分で見るのをやめてしまった人も多いのでは……。

 しかし、これはかつての“月9っぽさ”をあえてなぞった、自覚的なセルフパロディではないかと私は思いました。
というのも、この『リチプア』には、これまでの月9ドラマが描いてきたあらゆるベタが詰まっているからです。

 そもそも、天才型のIT社長である日向(=王子様)が、就活難民の女子大生である真琴(=庶民)の純朴な熱意に惹かれていく……というあらすじ自体、古典的なシンデレラストーリーそのもの。
一見、真琴より日向とお似合いのシェフ・朝比奈燿子(相武紗季)が恋のライバルとして登場し、結局は真琴の思いの強さに身を引く…という展開もセオリー通りです。

 きわめつけは、惹かれあいながらもすれ違いを繰り返すふたりに、「真琴が仕事でブラジルに赴任」という事態が到来、出発寸前の空港に日向が迎えにくるという王道すぎる最終回!
もしこの世に“月9の教科書”というものがあったら、最終回の「よくある例」に載るやつです。試験にも必ず出ます。

 こうした“月9っぽいベタ”のひとつひとつは、とっくに賞味期限が切れています。
しかし、制作サイドが「わざとやってるんだよ」と最初に意思表示をしておくことで、このドラマは「あえてベタを楽しむ」という一周先の見方を、視聴者と共有することに成功したと思います。

 しかも、それをネタとして笑う方向に持って行くのではなく、あくまで「正統派の月9ドラマ」として本気で作ってみせたのが『リチプア』の矜持。
“月9っぽさ”から逃げるのではなく、“あえて月9っぽくふるまう”ことで、「作り込まれたファンタジーってやっぱりおもしろいよね」という月9ドラマの可能性をきちんと示して見せたのです。