『ハッピーマニア』が暴いた恋愛の入れ替え可能性!?

 主人公のシゲカヨは、運命の相手を求めてワンナイトラブを繰り返しますが、
すぐに「この人じゃなかった」と冷めては、次の恋に突っ走ります。

 この作品が浮き彫りにしてしまったのは、恋愛においては “この人じゃなきゃいけない”という唯一絶対の相手なんて存在せず、 自分の幻想を投影できるオトコなら“誰でもいいのだ”という、 当たり前ですがショッキングな真実でした。

 「あたしはあたしのこと好きになる男なんてキライなのよ!」
というシゲカヨのセリフが表しているのはつまり、 “自分が好きになる男”と“自分を好きになってくれる男”は いつまでも永遠にかみ合わないということ。

 それゆえ人は、「もっといい男がいるはず」
「もっともっといい男がいるはず」という無限ループに陥って、
“どんなに恋愛をしても決して一人を選べない”のです。

“いつまでも決められない恋愛”を強いられている私たち

Pin-up Girl) By Markiza Pin-up Girl) By Markiza

 それでは、『私が恋愛できない理由』の3人はどうでしょうか。
 彼女たちは、自分の“こだわり”や“思い込み”にしがみつくあまり、 自分の幻想を投影できる“理想のオトコ”を現実の男性から選ぶことができません。

 今はただでさえ、相手を品定めする条件や、 付き合う前の事前情報をいくらでも手に入れることができる時代です。
「この男じゃない」「この男でもない」と思っていたら、キリがありません。
つまり、“一人を選べないから、いつまでも恋愛ができない”のです。

 『私が恋愛できない理由』の3人と、『ハッピーマニア』のシゲカヨ。
一見、正反対の両者ですが、“幸せ”や“理想の恋愛”という 実体のないものを追い求めているという意味では、どちらも同じなのです。

 さて、『私が恋愛できない理由』の白石美鈴は、幸せな結婚をしたものの、 今度は“子供がほしい”のに“できない”という新たな自己実現の
ぬかるみにハマッて悩み、傷つきます。

 もしも、『ハッピーマニア』で当時25歳のシゲカヨだった稲森いずみが、 『私が恋愛できない理由』で、現在39歳の白石美鈴である稲森いずみになったのだとしたら、 女の幸せとは、果たしていつどこにゴールがあるのでしょうか……。
なんだか、途方に暮れてしまいますね。

Text:Fukusuke Fukuda