何者だ!どうでもいいけれど

ものすごくいろんなことを話し合っているようで、本質的にこの人のことは何も知らない…?まだ顔を合わせていない段階というのもあって、そんな不可思議な気持ちでいた、そんなあるときのこと。

なんとなく彼女のことを「気になって調べてみました!」と、SNSのプロフィール写真を画像検索したところ、ヒットしたのは聞いてた年齢よりだいぶ下の女子大生のInstagramアカウント。別人!そうなってくるとDMで「***ちゃんからお話聞いてます」みたく話しかけてきた女友達のアカウントも、生活時間帯とか発信内容がカブって、それはまるでひとりが2アカウント回してるかのような感じで…一体おれは誰とやり取りをしている…?

などと思ったりもしたけど、その子とのやりとりが面白いことに変わりはなく、実際その子と会ったりもして(アイコンとは別の子だった)、とてつもないモテのさなかにいるというのは見せてもらったLINEでも伺い知れた。きっとある面は真実で、ある面はそうでないとかそんな感じだろう。リアルよりリアリティ、なんかわからないけど面白いからよし!
その後も詳しく掘ることもせずに趣味や仕事の話をしてたけど、気づけば綺麗にアカウント類もあとかたなく消えていた。アカウント名で検索したら、突然の消失を残念がる男性の声が複数並んでいた。

「もっとよく知りたい」が心をくすぐる

魔性。なんだか妖しげで、だけど圧倒的な魅力。それはソース不明の圧倒的な火力を指すのであって、もしかしたらそこに虚実の線引きはひとまず置いておいてもいいものかもしれない。謎が解き明かされて急につまらなくなるミステリー作品とか、ちょいちょい具体的ながら“作者の気持ち”は最後までわからないから面白い椎名林檎「正しい街」とか、魅力の源泉には相手の「謎」と、こちらの「知りたさ」のバランスが関係していそうだ。
例えばTwitterでは有名大学生との優勝報告を重ねた「暇な女子大生」、詐欺で逮捕されるまでラグジュアリーな生活を送るキラキラアカウント「ばびろんまつこ」なんかもそう。「ホントかよ」と勘ぐる前にまず強さがくるみたいなキャラクターが、今日のインターネットでも定期的にキャットウォークしてる。 魔性は作れる!かもしれない。

いやもちろん真実であることに越したことはないんだけれど、どうかこれからも世の異性に正体不明の攻撃を繰り広げて夢中にさせてくれたらと思う。私の妻も、その底知れぬバイタリティとか感受性は見ていてとても興味が尽きないヤベー相手だ。実に手強くてたまらない。

Text/本人

初出:2018.12.27