夢も女も崖っぷち!救いようがないばしゃ馬さん

吉田恵輔 麻生久美子、安田章大、岡田義徳、山田真歩、清水優 東映 たけうちんぐ ばしゃ馬さんとビッグマウス こじらせ女子 夢 恋 シナリオ 関ジャニ∞ 2013「ばしゃ馬さんとビッグマウス」製作委員会

 みち代がとにかく気の毒で、悲しくなります。
何度頑張ってもシナリオコンクールには掠りもしない。悔しくて部屋で号泣する。友人に先を越される。ほんと、どうしようもない。“夢”がこんなにも一人の女を苦しめるなんて…。

 現実の恐怖が、何の罪もないみち代に次々と襲い掛かる。そんな地獄絵図で右往左往するみち代に自己投影してしまう人も少なくはないはず。ていうか、これが麻生久美子みたいな美人じゃなかったら絶望しかない。

 みち代が老人ホームで働き出してからの描写も心苦しい。
仕事もまともにできない自分に嫌気がさし、挙げ句の果てに元恋人・松尾の前で泣き崩れ、頼ってしまう。そして地元の友人が結婚していく焦り。両親の目。これぞ崖っぷち。馬渕の「ふち」は、崖っぷちの「ふち」じゃないか。

 夜間のシナリオスクールの教室の暗さがまたリアル。かつて夢を目指していた人、現在進行形で夢を目指している人にとっても、その暗さは心を掻きむしられる。
どうしようもないみち代と天童を客観的に見てしまうと、「この映画に出ている人たちは、一体何が楽しくて生きているの?」とすら思ってしまう。

 こんなまったりとした絶望感に包まれた物語のどこに救いがあるのか?
それは、天童の底抜けに楽観的なキャラクターです。彼のような「まっ、何とかなるわ」精神はみち代にはない。それが理解できなくて苛立つみち代だけど、知らないうちに彼に癒されていることが分かっていくのです。

人生のシナリオは終わらない

吉田恵輔 麻生久美子、安田章大、岡田義徳、山田真歩、清水優 東映 たけうちんぐ ばしゃ馬さんとビッグマウス こじらせ女子 夢 恋 シナリオ 関ジャニ∞ 2013「ばしゃ馬さんとビッグマウス」製作委員会

 みち代は夢の終わらせ方に踏ん切りがつかない。

「夢を終わらせるのってこんなに難しいの?」

 松尾に泣きながら問いかけた言葉がグサッと刺さる。
人生は最後に(了)という字がつけられない。ハッピーエンドで都合よく終われない。良いことも悪いことも明日に続いていく。挫折するみち代は、延々と流れていく堕落に苛まれていく。

 だけど、人生にはシナリオと同じように主人公以外の登場人物が存在する。一人じゃない。
みち代は天童の仲間たちとともに同じ時間を過ごし、その中で自分が今まで「夢のために」避けていた人との繋がりを実感する。

 無駄な時間こそが無駄じゃない。夢を追い続けることだけが全てとは限らない。
楽観的な天童のおかげで、狭まっていた視野が急激に広まっていく。この救いの描写が、夢を追いかけるゴマンといる人々への希望にも見えてくる。
道は一つじゃない。シナリオは決められた展開しか歩めないけど、人生は簡単にころっと向きを変えることができるかもしれないのです。

 挫折したみち代は映画のシナリオを書き続けるのか、それとも人生のシナリオを歩み始めるのか。それを天童はどう見守るのか。男女の関係に筋書きはない。その関係は恋か、友情か……。