少女という身分は何でも許される。いわゆる“人類最強”?
『ロッタちゃん はじめてのおつかい』

 最後に紹介するのは、スウェーデンの国民的作家A・リンドグレーンの人気童話を実写映画化した『ロッタちゃん はじめてのおつかい』。愛らしい女の子が家族、そして何よりも自分ために頑張ります。

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画 1993 AB Svensk Filmindustri

ストーリー

 5才のロッタちゃん(グレテ・ハヴネショルド)はパパとママとお兄ちゃんとお姉ちゃんの5人家族。気分屋でマイペースのロッタちゃんは、お母さんが用意した服が気に入らないと隣に住むおばちゃんの家で“一人暮らし”を始めるが、お化けが出そうなのですぐに帰る。
やがてクリスマスなのにクリスマスツリーがないことに嘆くお兄ちゃんとお姉ちゃんに、ロッタちゃんが奇跡を巻き起こす――。

ロッタちゃんを最強にさせるのは、大人の優しさ

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 子どもは最強なのかもしれません。
だって、寂しそうな目をしていたら近所の人たちが救いの手を差し伸べてくれるわけだし、甘えても許されるという特権があるのだから。

 その証拠に、お気に入りのお菓子屋さんの優しさ。お菓子屋さんはもう閉店するのに、泣き出したロッタちゃんに売れ残ったお菓子をいっぱいお土産にくれる。それのおかげで、ロッタちゃん一家に奇跡が巻き起こるのだから、ある意味彼女は魔法使い。
計算しない愛くるしさが、周りの人の優しさを生んでしまうのです。

 これがちょっぴり羨ましくも、妬ましくは思えない。だって、大人がこれをやってしまったら単にイタイし、病院送りにされるかもしれない。ロッタちゃんがクリスマスの夜に起こす奇跡も、子どもだからこそ生まれるファンタジー。
「子どもには夢を見させなきゃ」という大人たちの気持ちが、ロッタちゃんを最強にさせるのです。

想像する間が全くナシ!逐一報告されるロッタちゃんの心情

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 ロッタちゃんが何を思っているのかは、すべて彼女が話してくれる。
一人でいるときもバムセと名付けられた豚のぬいぐるみに話しかけるように、「嬉しい!」「悲しい……」「今、怒ってる!」と喜怒哀楽を逐一リアルタイムでこちらに投げてくる。ある意味Twitter的実況が、この映画の最大の特徴です。

「これって映画としてどうなの?」と首を傾げる人もいると思います。主人公が自分の気持ちをその場で全部伝えるなんて。でも、これが“子ども”の映画。映画自体も子どものように、大人の優しさでカバーされてしまう。

 この映画にはとてもじゃないけど怒れない。愛らしいロッタちゃんに優しくしてしまうように、映画にも優しくしてしまうはず。いちいち指摘するほうがバカらしくなるほど、平和なムードに包まれている。その原因はロッタちゃん。純粋な欲望と行動に満ち溢れた主人公が、映画すら無敵にしている。観ている我々こそが、バムセになった気分です。
つまり、何も言えないまま、ロッタちゃんに付き合わされるってことです……。

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画

『ロッタちゃん はじめてのおつかい』DVD
価格:1,280円(税込)
発売:アスミック・エース
販売元:KADOKAWA 角川書店

 今回は、『小さな女の子が頑張る』をテーマに作品を選んでいたのですが、 “頑張ってる”って思うのはそれを見ている他人なのかもしれません。
この子たちは抗えない現実に直面し、それと向き合っているだけ。自分が頑張ったなんて思っていないでしょう。

 それでもその姿は誰かの勇気になる。特に、面倒くさい大人の事情に雁字搦めな我々の。
新子と、ジニと、ロッタちゃん。彼女たちは特別な能力が備え付けられた女の子でもない。どこにでもいる、普通の女の子だからこそ勇気付けられるのです。

 思えば全員、おかっぱ頭なんですね。
これはもう、大人の皆さんもおかっぱ頭にするしか方法はありませんね。そんなことはないですね。

Text/たけうちんぐ

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