【大人の事情に疲れた人向け】女の子が薄汚れた大人社会を救う映画まとめ

 子どもの頃、あなたはどんな女の子でしたか?
あの頃、“恋愛”なんて程遠いものだったかもしれない。だからこそ男女間の友情は成立していたし、大人の面倒くさい駆け引きも必要なかった。 いつから、こんな大人になってしまったのか……。

 少女の頃は夢を語ったり、希望を胸に抱いたり、妄想に耽っていた。
でも次第に、夢も希望も妄想も敵わないことを知り、現実的な人間になっていく。そして、いつの間にか少女じゃなくなってしまう。だからといって、「あの頃はよかった」止まりの懐古厨はもってのほか。
「そうだ、女の子はこんなに強いんだ」と眠っていた初期衝動を呼び覚まし、明日に向かえる三本を紹介します。

おてんば女子とクール男子の“約束”とは
『マイマイ新子と千年の魔法』

 一本目に紹介するのは、芥川賞作家・高樹のぶ子が自らの幼少期をつづった自伝的小説のアニメ映画化。
空想好きのおてんば少女・新子が、生と死が入り乱れる田舎街で頑張ります。

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画 2009 髙樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会

ストーリー

 昭和30年、山口県。田舎町で暮らす新子(声:福田麻由子)は転校生の貴伊子(声:水沢奈子)と仲良くなり、同級生の男の子たちを巻き込んで一緒にダム池を造る。そこで“ひづる”と名付けた金魚を飼い、遊びに溢れた楽しい日々を送っていた。しかし、何不自由なく平和に暮らしていた新子たちに、ある悲しい事件が立ちはだかる――。

何も考えずに遊んでいた少女が、“死”の存在を知る

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画 2009 髙樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会

 昭和、田舎、おてんば少女。このキーワードには平和しか思い浮かばない。
空想が好きな新子には目に見えないものが見える。透明なものを追いかける。思えば、子どもの頃はそうだった。いないはずの誰かと話したくなったり、突然走り出したくもなったりした。
ファンタジーってジャンルを掲げなくても、子どもの世界自体がファンタジー。

 お金持ちの家の娘の貴伊子は、田舎町の学校のクラスメイトと上手く馴染めない。それでも、新子のある意味空気を読まない性格のおかげで打ち解けていく。二人がウィスキー入りのチョコレートを一緒に食べて、「にっが!」と悲鳴を上げながらもベロベロに酔っ払う姿は可愛らしい。
思えば、自分にもこんな頃があったっけ。あの頃は少しのアルコールで相手と打ち解けられた。今みたいにオールなんて必要なかったんだ……。

 と、子どもの世界はユートピアとして描かれている。だけど、この映画はそれで終わらない。
突如として不倫、自殺といったキーワードに踏み込み、現実が襲ってくる。子どもには理解できない大人の悩みに振り回され、怒ったり、泣いたりするしかできない。
この世界はファンタジーではないことに気付く瞬間こそが、大人への第一歩なのかもしれない。人は傷つき、いつかこの世界から消える。これを理解できてしまう大人になった自分自身に、この映画は“生と死”を静かに問いかけてくるのです。

約束をすることで、少年少女は明日に向かう

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画 2009 髙樹のぶ子・マガジンハウス/「マイマイ新子」製作委員会

 約束って、最近いつしたんだろう。
一人で生きていたら約束なんてできない。また会いたいと思える誰かがいることで、約束ができる。

 大人の愛と性が、クールな男子・タツヨシの運命を変えてしまった。絶望を知った友人の彼に、新子が投げかけた言葉が印象的なのです。

「また一生懸命遊ぼうや!」

 このセリフには目に涙を溜めずにはいられない。
子どもは遊ぶのが仕事とはよく言ったもの。一生懸命遊ぶなんて、最近いつしたんだろう。そうか、彼らは遊ぶことに無我夢中だった。このセリフで初めて思い知らされるのです。
約束というのは、次につなげる行為だとつくづく思う。「生きろ」などと誰かに促されるかのように焦って生き続けるより、あの人とまた会いたいと思い、また会うことを約束するほうが、日々をつないでいる気がする。タツヨシは、新子と一生懸命に遊ぶ日が来るまで生き続ける予感しかしません。

 思春期前の男女間の友情は成立する。でも、新子とタツヨシだっていつかは大人になる。
女と男になった二人が再会する姿を妄想し、二人の物語を想像することが、大人に許されたファンタジーなのかもしれません。

マイマイ新子と千年の魔法 冬の小鳥 ロッタちゃん はじめてのおつかい たけうちんぐ 映画

『マイマイ新子と千年の魔法』DVD
価格:6,090円(税込み)
発売元:エイベックス・エンタテインメント株式会社
販売元:エイベックス・マーケティング株式会社