恋人だけじゃないから、ただのロマンスだけでは終わらせない

ニューヨーク、恋人たちの2日間 ジュリー・デルピー ジュリー・デルピー クリス・ロック アルベール・デルピー アレクシア・ランドー ダニエル・ブリュール ヴィンセント・ギャロ アルバトロス・フィルム Polaris Film Production & Finance, Senator Film, Saga Film, Tempête sous un Crâne Production, Alvy Productions, In Production, TDY Filmproduktion – 2012All rights reserved.

 一つの恋愛は、一組の男女だけで行なうこと。だけど、そこにそれ以外の人々が入り込んできたら?
パリに住む家族がニューヨークにやって来たとき、マリオンの豹変ぶりにミンガスが戸惑ってしまう。
この状況、思い当たる節のある人も少なくはないと思います。

 親と一緒にいる自分、兄弟・姉妹と一緒にいる自分は、恋人に見せる自分とまた違う。
マリオンの場合、親も妹だけじゃなくて元カレすら一斉に押し寄せるのだから、ミンガスの衝撃は計りしれない。
ミンガスはここで、相手を「恋人」という肩書きでしか見ていないかどうか試される。
どれだけの男が、傍にいる人の「恋人」以外の面と真正面から対峙できるでしょうか。

 血が繋がっているはずなのにまるで理解し合えない人々。
人種、言語、文化の違いも入り交じり、とにかく笑わせます。
これが『ニューヨーク、“恋人”の2日間』ならただのロマンスで終わってしまうし、マリオンの本性を知らぬままミンガスは付き合い続けるでしょう。
だけど、“恋人たち”になることで彼女たちを取り巻く環境もひっくるめて、ロマンチックコメディに昇華されているのです。

「うわ、こんな家族ヤだな」とまるで地獄絵図のようにマリオンの家族を見ていても、最終的にはすべてのキャラクターが愛おしく思えてしまう。どうしようもないけど、なんか居心地がいい。
下品も下衆も兼ね揃えたジュリー・デルピーの人間愛は、上映が約80分後に差し迫る頃に「この映画、終わってほしくない!」とすら思わせてくれる。

 マリオン一家は、映画が終わるとまるで嵐が過ぎ去ったように感じさせる。
ただ一つの恋愛に、これだけのトピックが増えたら人生に退屈しない気も。
たった『2日間』とは思えないボリュームに驚いてしまうはずです。

7月27日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷他全国順次公開

監督・脚本:ジュリー・デルピー
キャスト:ジュリー・デルピー、クリス・ロック、アルベール・デルピー、アレクシア・ランドー、ダニエル・ブリュール、ヴィンセント・ギャロ
配給:アルバトロス・フィルム
原題:2 Days in New York/2012年/フランス・ドイツ・ベルギー合作映画/95分
URL:映画『ニューヨーク、恋人たちの2日間』公式サイト

Text/たけうちんぐ