ある一つの側面ではなく、十人十色の側面から。

ルイの9番目の人生 2017「blank13」製作委員会

「借金を背負って蒸発し、その分、母が昼も夜も働き詰めで工面した」と聞くと、雅人がとんでもないクズ野郎に思える。しかし、参列者の中にその人間性を否定する者は誰一人としていない。知られざる雅人の人となりが見えてくる。
あえて回想シーンで描かずに、個性豊かな参列者の思い出話で“ダメ親父”雅人のキャラクターを造形していく過程から、演者への絶大的な信頼しか感じ取れない。説明的な描写を排除し、断片的に切り取ることで人物像が生々しく浮かび上がらせる。

 生きている人間だって、ある一つの側面だけで語られてもその人の全ては分からない。十人十色の視点から、雅人の人として愛おしい部分や、ただ単にダメな人間ではなくそう思われる理由などが添えられていく。
ケーキでいうと真っ白な体に、様々な彩りでデコレーションされていくようなものだ。いや、借金塗れだった雅人の場合はかなり腐ったカビだらけのケーキかも知れないが、コウジ、ヨシユキの心の中で少しずつ甘みが付け加えられていく。

 高橋一生、松岡茉優、斎藤工という第一線で活躍する俳優たちが、葬式では常に“受け”の芝居をしている所も特徴的だ。時に暴走する参列者の雅人に対するエモーションが、緊張感ある葬式を『笑ってはいけない◯◯』にすら感じられるほど笑いを誘い、死んでしまった人を生きてるかのように身近に感じられる。

 人はいずれ死ぬ。人として生きる以上、誰かに見送られる。葬式に参列する人の“数”ではなく、“想い”こそがその人がこの世に存在していた証明だろう。
どこか欠点があっても憎くても、すでにこの世にいないという事実には負けてしまう。その人のことを知ろうとする時にこそ、“赦し”がある。これは先逝く人すべてに贈るラブレターのようだ。

ストーリー

 多額の借金を背負って蒸発し、13年間行方不明になっていた父・雅人(リリー・フランキー)はガンを患っていた。
すでに余命3ヶ月の雅人の消息を掴んだ次男・コウジ(高橋一生)は病院を訪れ、再会を果たす。だが、家族を捨てて出て行った雅人を、長男・ヨシユキ(斎藤工)と母・洋子(神野三鈴)は会おうとしなかった。

 それから3ヶ月が経ち、それぞれの溝が埋まらないまま雅人はこの世を去る。やがて葬儀当日を迎え、参列した人々の想いから、コウジもヨシユキも知らなかった雅人の姿が明らかになっていく。
取り戻すことのできない13年間の空白が、次第に埋まっていく――。

2/3(土)シネマート新宿にて公開 2/24(土)全国順次公開

監督:齊藤工
キャスト:高橋一生、松岡茉優、斎藤工、リリー・フランキー、神野三鈴、佐藤二朗、大西利空
配給:クロックワークス
2017年/日本映画/70分
URL:『blank13』公式サイト

前売券
Text/たけうちんぐ

次回は<愛する人の仇を討つために、愛した人を葬り去るために、彼女は“悪女”になる>です。
殺し屋に育てられたスクヒは、愛する人を殺されたことで敵のアジトに復讐する。その後、国家専属の暗殺者となった彼女は新しい生活を始めようとするが——。第70回カンヌ国際映画祭を騒がせた韓国発・スタイリッシュアクション映画『悪女/AKUJO』をご紹介。