かつて耳元で囁かれた物語のページを開く

ひるね姫 高畑充希 満島真之介 古田新太 釘宮理恵 高木渉 前野朋哉 清水理沙 高橋英樹 江口洋介 2017ひるね姫製作委員会

 昭和に描かれた2020年は近未来でしかなかっただろう。たとえ地方であっても、その想像の世界では自動車が空を飛んでいた。瞬間的に移動できる装置だって開発されていたはずだ。

 だが、もはや目の前に控えた未来は決してそんなことはない。ただその代わりに、モリオが装着するVR(仮想現実)ゴーグルという文明的な想像力と、ココネが眠って見る夢という潜在的な想像力といった二つが重なり合うことで、見たことのない未来を本作が作り出している。

 瀬戸大橋、戒橋、レインボーブリッジといった日本各地の“橋”が象徴的に登場する。現実と夢、過去と現在、娘と父親というあらゆる島と島の架け橋をイメージさせる。
父親と年頃の娘という繊細な関係性が、親子という普遍的なテーマをより濃く描き出す。普段食卓では直接会話しないのに、SNS上では饒舌に喋り合う二人にどことなく親近感がわく。

 子どもにとって親は生まれた時から親で、彼らもかつて子どもだったことに気づくには時間がかかる。ココネがそれを知り、夢の正体がすべて明らかになった時、SFもアクションもアドベンチャーもすべて取り払われる。夢から醒めて、これが日常の一ページであることに気づくだろう。

 子どもの頃、かつて耳元で囁かれた物語を覚えている人はいるだろうか。
ここに来たら思い出せる。その中に入り込める。そのような作品なのかも知れない。誰かが誰かのために、父が娘のために。その物語は決して揺らがないだろう。

ストーリー

 2020年、東京オリンピックの開幕が目前に迫った夏。岡山県倉敷市・児島で女子高生・森川ココネ(声:高畑充希)は車の改造をしている父・モモタロー(声:江口洋介)とともに二人で暮らしている。

 ココネは常に眠気に襲われ、家でも学校でも居眠りばかり。それに、その夢はなぜかいつも同じ。

 ある日、モモタローが突然警察に逮捕され、東京へ連行されてしまう。ココネはその理由を探るために、幼馴染の大学生・モリオ(声:満島真之介)とともに旅に出る。その中で次々と夢の謎が解き明かされ、ココネが知らない父と母の物語に触れることになる。

3月18日(土)全国ロードショー

監督・脚本:神山健治
キャスト(声):高畑充希、満島真之介、古田新太、釘宮理恵、高木渉、前野朋哉、清水理沙、高橋英樹、江口洋介
配給:ワーナー・ブラザーズ映画
2017年/日本映画/110分
URL:『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』公式サイト

Text/たけうちんぐ

次回は<あなたのスマホ、人に見せられますか?仲良し男女7人が秘密の暴露で崩壊する『おとなの事情』>です。
携帯にかかってきた電話や届いたメールを見せ合うゲームを始めた男女7人。隠された素顔がさらけ出され、仲が良いはずの関係が崩れかけていく——。イタリアの映画賞で最優秀作品賞に輝いた“おとなの”コメディ。