映画の終わりは2人のはじまりを告げる

たけうちんぐ 映画 キャロル NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED

 同性愛を描いた映画は悲しい結末を迎えがちだけど、本作は違う。
二人の物語は、この映画だけで完結するつもりはないのだろう。

 確かに、キャロルとテレーズには悲劇は似合わない。
映画はエンドロールを迎えても、その後も登場人物は生き続ける。
その想像の余白をちゃんと作ることで、同性愛が精神病扱いされていた時代に、確かに愛し合っていた2人が存在したこをを慈しむように切り取っている。

 現実世界の多種多様な愛の形に最上級のエールを送るかのように、映画の終わりは2人のはじまりとして幕を閉じていく。
 どのシーンも絵画のごとく美しい。
それは“テクニカラー”という特別な彩色技術が施されているからだ。
1950年代のニューヨークとその時代に作られた映画作品を再現し、地下鉄から地上へカメラが浮遊して車のライトや街灯を映すオープニングは、昨今の映画と一線を画す。
テレーズが車窓から眺める景色すべてが独特な光を滲み出していて、それを見るだけでも一見の価値がある。

 たとえお金を持っても、安定した暮らしが約束されても、愛に生きていなければ息苦しいだけ。

 そんなキャロルの生き方に、テレーズのように惹かれる人は少なくないはず。
何が正しくて間違えているのか。
時折判断がつかなくなる現代に生きる我々に、2人の愛が容赦なく突き刺してきます。

あらすじ

 1952年、ニューヨーク。

 デパートでアルバイトをするテレーズ(ルーニー・マーラ)は、娘へのクリスマスプレゼントを探すキャロル(ケイト・ブランシェット)に目を離すことができない。
美しくて高貴でどこか謎めいている彼女に見惚れ、魅了されていく。一方、キャロルは別居中の夫と揉め、離婚の意思を固める。
親密になったテレーズに八つ当たりをしてしまったキャロルは、電話で謝り、テレーズのアパートを訪れることになる。
二人は互いに惹かれあい、自分に正直に生きようと決意する。そして思いつくままに西へと向かう旅に出る――。

2016年2月11日(木・祝)より、全国ロードショー

監督:トッド・ヘインズ
キャスト:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、サラ・ポールソン、ジェイク・レイシー、カイル・チャンドラー
配給:ファントム・フィルム
原題:CAROL/2015年/アメリカ映画/118分
<『キャロル』の前売券>

Text/たけうちんぐ