愛は、たった一回の人生で死なない

 その愛は、たった一回の人生で全うできるのか?ジャクリーヌがそれを教えてくれる。
 息子への愛は絶対だ。でも、それに相応しい環境が整っていないし、運命に見放される。息子の寿命は短い。その存在を生きがいにしている彼女にとって、一生はいかに短く感じるものだろう。

 眠ると夢を見るように、デジャブを感じるように、過去と未来の境界線を無自覚に越える不思議な時間がある。その追求をしようとも、数分後には夢もデジャブも忘れてしまい、現実世界を生きることになる。

たけうちんぐ 映画 死ぬまでには観ておきたい映画のこと ジャン=マルク・ヴァレ ヴァネッサ・パラディ ケヴィン・パラン エレーヌ・フローラン エヴリーヌ・ブロシェ ファインフィルムズ Café de Flore カフェ・ド・フロール 愛 薬物中毒 離婚 運命 2011 Productions Café de Flore inc. / Monkey Pack Films

 それは人によれば“未練”の一言で片付けられるかもしれない。でも、この映画はそんな愛の追憶に優しい。それは、キャロルが違法ドラッグに手を染め、忘れられない愛の幻影を追う姿を神秘的に描いているからだ。
同時に、息子を愛するがゆえに不遇の一途を辿るジャクリーヌを救済すべく、スピリチュアルな展開が待ち受けている。

 愛は、たった一回の人生で死なない。そんな確信が映画全体に漂い、愛の喪失に苦しむキャロルと、愛の不遇に立ちすくむジャクリーヌの傷を癒しているのです。

一曲が全てを繋げる、新しい形の“音楽映画”

 DJはレコードの一枚ともう一枚を華麗に繋げる。間髪入れずに別の曲に移り変わり、観客をアジテーションする。この映画もアントワーヌのDJプレイのように、一つの時代ともう一つの時代を繋げて、全く違う愛の形を見境なく一つにする。

 カット数が多く、シーンの切り替わりが早い。一見、取り留めもない映像の羅列と思いきや、『カフェ・ド・フロール』の音楽が一本に美しく連ねている。めまぐるしい展開にヤラれる。それでも、音楽のリズムが作中のテンポを一定に保ち、観客を置いてけぼりにせずに盛り上げてくれる。

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 音楽と同様に、愛は形として存在しない。誰かが形に残そうとレコード、ディスク、データに移し替える。愛もまた、物語にして形を残している。それが本作だ。

 物語というものの存在意義を感じる。幻覚から逃れられないキャロルの絶叫と、窓ガラス越しに半透明に映る虚ろなジャクリーヌの目が交錯した時、“小さなモンスター”の正体が浮き彫りになる。

 果たして“運命”は本当に存在するのか?
本作はこの答えを探るべく、40年もの時を隔てる壮大な心の旅を描いているのです。