数年前、あるアイドルに交際疑惑が浮上した。元カレ(と名乗る男性)がリークしたふたりのやりとりの中に「エッチだってしたのにふざけんな」というフレーズがあったことが、強く印象に残っている。
ここで言う「エッチ」は付き合ってからのセックスを指すのだろうし、そもそも騒動の真偽も定かではない。それでもこの言葉からは、セックスに込めた特別な意味を汲み取ることができる。

セックスを、まだしていない将来の――付き合うとか、その先の結婚なども含めた――約束の対価として「先払い」する感覚が少しでもある人は、付き合うまでは、何があってもセックスしない方がいいと思う。付き合う前のセックスが悪いのではない。セックスは対価でも報酬でもなく、ただのセックスでしかない。勝手に先払いした気になって彼を責めるのは、「(一晩だけでも)魅力的だった女」から、「面倒なクレーマー」に成り下がるのと同じことなのだ。

ここ最近、仲の良い後輩が、マッチングアプリを使ってセフレ作りに勤しんでいる。「タイプの人と、後腐れなくセックスができるなんていい時代ですよね」と満足そうに笑う彼女は本当に楽しそうだ。
性欲が薄めのわたしから見れば、「スノボに毎週行きます」みたいなハードな話ではあるけれど、わたしも彼氏と別れたら、毎週は無理でもたまにスノボするのもいいな、とぼんやり思ったのだった(暗喩)。

Text/白井瑶

初出:2018.02.22

次回は<「これが殺意か…」恋人とだけ激しいケンカをしてしまう私たち>です。
家族や友人とは激しい喧嘩はしない…けど、恋人だとどうしても感情的になってしまうのはなぜか?不満をかわいく伝えられたらいいのだろうけど、そんな術を持たない私たちは、相手のプライドを傷つけないように期待を込めていうしかないのだろう。