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私のいない場所に憧れる…知らない家の窓灯りが好きな地味な女の子

 自分を好きになってくれない人や身勝手な人ばかり好きになり、不安定な恋愛関係に陥ってしまう女性たちへ。
「私は最初から私を好きじゃなかった」――自己肯定感の低い著者が、永遠なるもの(なくしてしまったもの、なくなってしまったもの、はなから自分が持っていなかったもの)に思いを馳せることで、自分を好きになれない理由を探っていくエッセイ。

永遠なるものたち 001 「知らない家の窓灯り」

山でひとり朝焼けをみつめる女性の画像

 眠れない夜には、双眼鏡で知らない家の窓を眺めていました。まっ暗な部屋の窓辺に立って。もし見つかっても、叱られるだけで済んだ年頃のことです。見つかったことはないけれど、もしかしたら叱られもしなかったかも。他の人からしてみたら、どうしてそんなことをしているのか、妙に思われただけかもしれません。実際に私は、家の中にいる人を覗きたかったわけではないのです。知らない家の窓に灯りがともっている。私のいない生活がある。そのことが重要だったのです。

 私のいない生活に入ってみたい。へんてこな憧れは強く、どうしたら叶うのかわからなくて、私をひどくときめかせて、同時に寂しくもさせました。
しかしこれは、ただ誰かとの生活を交換することで手に入れられるものではないと、小さかった私もどこかで分かっていた気がします。このことを誰かに話したことはないのですが、そんなことってありませんか?

 もっと幼かった頃、こんなこともありました。
夜、母親がつけていたテレビに、朝の光景が映っていたのです。まだ明るい空の下で、お兄さんが明日の天気を知らせていました。私は日本にもまだ明るいところがあるのだと思い込んで、とってもびっくりして、とっても羨ましくて、ちょうど電話をかけてきた遠くに住んでいる祖父に、「そっちはまだ朝なの?」と聞いて、驚かせたのです。

 私のいない朝がある。祖父が夜だよと答えているのも耳に入らないくらい、このことは私を歓喜させました。心躍らせたまま眠りにつき、しかし目が覚めた時、私はいつもと同じ朝にいたのです。ぽかんとしました。砂漠で辿り着いたオアシスが幻だった時の旅人みたいに。

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