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  • 2017.06.16

90年代ヒットメドレーを聴いたら死にたくなりました

小学生や中学生時代を過ごした90年代のヒット曲からあなたは何を思い出しますか?

夕方の海辺にひとり座り考え事をする女性の画像
©PRORandy Robertson

 みなさんは、スズランテープを割いたことはありますか?私はあります。束にしたスズランテープを、髪の毛用のブラシを使って、夜な夜な「シャー!シャー!」という音を立てながら割いたことが。なぜそんなことをしていたのかというと、中学校の体育祭で踊るダンスの、ポンポンを作るためです。もちろん、もう15年以上も前の話です。

 なぜこんな話をしたのかというと、先日あまりにも行き詰まって深夜に魔が差し、「90年代ヒットメドレー」を思わずYouTubeで視聴してしまったから。ということで今回は、おそらくこれを読んでいるアラサー世代のみなさんの90年代――小学生や中学生だった時代について、少し思いを馳せてみてほしいのです。

音楽がもたらす感情の記憶

 冒頭の話にもどりましょう。私がなぜ夜な夜なスズランテープを割いてポンポンを作っていた中学生時代を思い出したのかというと、このヒットメドレーのなかに鈴木あみの『BE TOGETHER』が入っていたからです。懐かしさ溢れる他の曲たちに混ざってこの曲が入っていたわけですが、鈴木あみさん及び関係者の方々には申し訳なくも、これを聴いた私はなぜだか非常に気分が落ち込んでしまったのですね。いったい何があったんだ、なぜこの曲はピンポイントで私を落ち込ませるのだと深夜に頭を抱えていたのですが、午前3時をまわった頃、やっとのことで思い出しました。『BE TOGETHER』は、私の中学校で体育祭のダンスの曲として使われていたのです。

 私はもちろんダンスの振り付けなんて覚えていないし、この曲が中学校の体育祭で使われていたことも、すっかり忘れていました。それなのに、『BE TOGETHER』がもたらすマイナスの記憶――夜な夜なスズランテープを割いてポンポンを作らなければならなかったときのダルさ、運動音痴の私にとっての体育祭の憂鬱、リズムに合わせてポンポンを振りながら踊らなければならなかった屈辱、そういうものだけはしっかり頭が覚えていたようです。音楽というのはすごい。具体的な記憶が頭から消えていても、感情の記憶だけはしっかり残っていたのですね。『BE TOGETHER』はそういうわけで、15年の時を経た今も、私を憂鬱と絶望の淵へ追いやります。

私の90年代、あなたの90年代

 我々アラサーが小学生や中学生時代を過ごした90年代。一般的に考えるならば、この時代の1つのターニングポイントとなったのが、ちょうど真ん中の95年だったといっていいと思います。阪神・淡路大震災が起きた年であり、地下鉄サリン事件があった年だからです。そこから世間は一気に世紀末のムードを漂わせ、1999年にはノストラダムスの大予言のとおり、世界が終末を迎えると信じていた人もいましたよね。90年代にヒットした曲を聴くと、総じてなんだか呑気で平和そうな印象を受けるのですが、もしかしたらせめて歌謡曲だけでも明るく振る舞おうという反動が働いていたのかもしれません。もちろん、当時の私たちはそんな世相など知る由もなかったわけですが、結局世界は終末など迎えずに、日常はかくも強固に続いています。

 そんな90年代に一世を風靡したヒットメドレーを聴いたとき、あなたのなかに蘇るのは、楽しかった記憶でしょうか、切ない記憶でしょうか、それとも私のように、憂鬱と絶望の記憶でしょうか。プルーストの『失われた時を求めて』のように、紅茶に浸したマドレーヌが記憶を呼び起こすのではなく、90年代ヒットメドレーによって記憶が喚起されるあたりがなんともダサいですが、これらの曲から思い出されるのは、何にもコーティングされていなかった頃の「剥き出し」の自分である、ということも同時に私は考えたのです。

 大学生くらいのときから、我々は多かれ少なかれ「自分」という1人のタレントのマネージャーとして、プロデューサーとして、外に露出する部分としない部分を上手く切り分けするようになったと思います。だけど小学生や中学生のときは、まだマネージャーもプロデューサーもおらず、タレントが1人で何の戦略も持たないまま歌ったり踊ったりしていた、とでもいえばいいんですかね。

 あの頃の歌謡曲ってやつは、なんともいい難いこそばゆい感覚を我々にもたらします。その理由は、時代や流行のズレから来ているというのもあるのでしょうけど、見せる自分・見せない自分を切り分けできていなかった頃の、剥き出しの自分を想起させるからなのではないか、と私は深夜に分析してしまったのです。

 90年代ヒットメドレーを聴いたとき、あなたは何を思うでしょうか?懐かしさかトラウマか、世相か時代の流行か――仕事や恋愛などに行き詰ったときに聴いてみると、「剥き出し」だったあの頃が思い起こされることにより、何かいい打開策が見つかるかもしれません。

Text/チェコ好き
From/SOLO

童貞の疑問を解決する本. 書籍版
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