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  • 2017.05.25

手からシュウマイを出すキャバクラのお姉さん

美しい女でもプラスアルファの価値を身に着ける必要がある。どんな場に招かれても、その場を盛り上げられる女でいたい。

マジックをしている女の子 マジシャン 一芸を持ったキャバ嬢
©2015 momoko harada

 先日、数名での会食の二次会で、ひょんなことからキャバクラに行くことになった。私は前にも一度、大人の社会見学としてキャバクラに連れて行ってもらったことがあるので、今回は2度目の訪問である。しかも奇しくも前回と同じ店。2回も来れば常連、慣れたもんである。緊張に満ちた初回訪問からは考えられないほど余裕の入店。
お姉さん方と楽しく会話を繰り広げていたわけだが、途中でふと、テーブルについてくれたお姉さんの一人が「あっ、緑の玉が落ちちゃった」と言い出した。何だ緑の玉って。隠語か何かかと思いながら、居合わせた者たちで、言われるがままに謎の緑の玉を探す。ほどなくして、ビー玉より一回り小さいくらいの、文字通り緑色の玉がどこからともなく見つかる。手渡すと「ありがとうございます〜」とにこやかに受け取るキャバ嬢。するとここから突如、お姉さんによる魔法のようなひとときが始まった。

「ではこれから皆さんにマジックをお見せします」とお姉さん。先ほどの緑の玉を手のひらに握る。指示を受けた我々は、3、2、1とカウント。0、のタイミングで、ほらっ!とお姉さんが握った手を開くと……なんということでしょう。お姉さんの手からシュウマイがでてきたではありませんか。

……なぜ、シュウマイ!?

 驚きと疑問で頭をいっぱいにしている最中、はたと気づく。シュウマイの頂上に堂々と鎮座しているグリンピース、まさかあれは、あれは……先ほど捜索した、私たちの、緑の玉!!! そうか、お前はグリンピースだったかと正体を突き止めてスッキリ。そんな風にして、キャバクラの夜は更けてゆく。

美しさプラスαの価値

 今回何を書きたかったかというと、ひとえにこの緑の玉事件であって、そこから導かれる気づきというのは正直なところ何もない。ただ、この緑の玉のコンテンツ力をどうにか成仏させたかった。それだけ。でもきっとそれじゃダメなのでもう少し考えを深めなければならない。
結構お高いお店のキャバクラのお姉さんというのは、とにかくびっくりするくらい見目麗しい。陶器のように滑らかな肌、宝石のように大きな瞳、そして小枝のようにまっすぐな足。自分自身に商品としての価値があることを自覚し、美に磨きをかけた女性達の華やかさというのは、素人のそれとは明らかに一線を画している。日中の住宅街やオフィス街では滅多にお目にかかれないような美女たちが、代わる代わる私の隣にやってきては、話に耳を傾けてくれる。男性じゃなくたっていい気分になってしまう。
美しくあるというのは、ただそれだけで十分に価値あることのように思うけれども、その実、キャバクラのお姉さんというのは、先ほどの方のように手からシュウマイを出したり、カードマジックができたり(件のお姉さんは、シュウマイを出したあと続けていくつかのカードマジックも披露してくれたのだ)、そんな、美しさプラスαの価値を身につけている必要があるらしい。予想以上に、しのぎを削る世界なのだと思わされる。

お酒の席の会話では自分も同じ速度の車に乗っていたい

 そういえば男性もいるお酒の席に招かれるとき、男性が面白ネタを披露し、女性はそれを聞いて面白がる、という暗黙の役割分担があるケースが少なくない。よく分からないけど、女性が積極的に笑いを取りにいったり、ネタ的な話題に加担したりすると、モテ的な観点でマイナスに働いたりするらしい。男性が女性を楽しませようとしてくれるサービス精神は大変ありがたいし、いい女たるオーラをまとうにはサービスされて然るべき、といった態度を必要とする場合もあるのだろう。
が、そうは言っても、私はやっぱり、ただ笑ってるだけの食事より、自分の中からどんどん言葉が出てくるような食事の方が楽しい。以前、漫画編集者ら数名との食事会で、このネタにはこんなキャッチをつけてこんな売り方をしよう、といった話題でとめどなくボケあったときなんか、もう最高に楽しかった
。 架空の物語を話の中でどんどん商品化していく、そんなドライブ感って、自分も同じ速度で走る車に乗ってないと感じられない。パラソル持ってコース脇に立ってるサーキットの娘では、絶対に味わえない。コンテンツを大切にする男性の視線をただ暖かく見守るのでなく、プレイヤーとして一緒にコンテンツを作り上げていきたい。会話の中で、産み育てたい。

 そういったことをふまえて再度振り返ってみると、やはりあの緑の玉に端を発したキャバクラのマジックお姉さんの存在というのは、私の中で圧倒的なインパクトを持っていた。男性を気持ちよくさせるべきキャバクラという場で、自らのコンテンツ力を極限まで高め、緑の玉を自在に繰り出す美しき魔術師。キャバクラ界に新風を吹かせるジャンヌダルクとして、ますますのご活躍を陰ながらお祈りしている次第である。


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Text/ 紫原明子
From/SOLO

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