既婚者に惹かれる理由

 あさこちゃんは、ゆっくりと言葉を選びながら既婚者に惹かれる理由を語った。

家庭持ってる人の、落ち着きに惹かれちゃうんだと思う。外面もいいし、がっつかないし。未婚の人のあわよくば感とかチャラい感じがダメなんですよね。一緒に外に出た時に恥ずかしいっていうか、店員さんに態度が悪そうだなとか人間性が疑われる感じがして」

 いやいや、結婚してない男もそんな人ばかりじゃないけどね、とヘラヘラ返しつつ、家庭を持ってる男がよく見えるのもわからなくもない。
既婚者ががっついてないのはまあ当然のことだし、落ち着いているのもまあ当然のことだ。それはつまり、こっちに一生懸命じゃないからだ。

 でも、そんなこと言ってたら普通に愛されにくくなっちゃうよ? とおずおずと言うと「そうなんですよねぇ」と、噛みしめたあとに続けた。

「家庭の話を聞くのも好きなんですよね。家庭を大事にしてるってことは嫉妬とかにならなくて“ああ、いい人だなあ”ってポイントになっちゃう

 好きな人の家庭の話を喜んで聞いてしまうのか…。
いい子だ…とてもいい子だ。自分が自分がという感じがまったくない。なんていい子なんだ。…いや、そんないい子だからこそ、心配!!

 つくづくあさこちゃんは、相手の重心が自分以外に置かれていることに抵抗がない。それどころかしっくりとさえきている。 「初めての男問題よねー」と、お互いにつぶやき、うなずいた。

初めての男問題

 あさこちゃんは、すっごく好きな初めての彼氏に罰告されちゃって。その人に二股もされちゃって。
だから「自分が一番でないことが当たり前」になってしまっている。
2人目の彼氏も、元の彼女との同時並行状態からはじまった。
ほら、もうそりゃそういう状況に慣れて抵抗なくなっちゃうさ。

 使い古された言葉だけど、若いときの男からの扱われ方が自分の基準となるのは本当だと思う。
「恋愛ってこういう扱いをされるもんなんだ」は骨の髄まで刻まれる。
最初にすんごい大事にされた子は、そういうもんだと思ってどんどん大事にされるのが上手になっていく。
そうじゃなかった子は「大事にされない自分」が当たり前となっていく。勿論いくらでも変わりうるけれど。

 あさこちゃん自身が「自分が一番じゃないこと」をちっとも不満に思っていないし、むしろ心地よくさえ感じているのだから、それで良いとも言える。
でも聞いている方は、やっぱりちょっと複雑だ。
だってあさこちゃんのここまでの登場人物は、全員浮気ありきの男。そして、また次も。

 次。そう、次の人の恋バナ。
あさこちゃんは、次は既婚者と大恋愛をした。そしてその人は、もうこの世にいない。

 この連載で初めて、私は言葉を失った。
とっても謙虚でとっても筋が通っている、そんな彼女の人間力は、ものすごい苦しみの日々から生まれたのかもしれない。

 次回、愛する彼氏が末期がんだったら、の話。待ちゆく人のリアルな恋バナがここにある…って言ってきたけど、こんなこと本当にあるんだね。そりゃあるんだろうけれど。

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次回は<「今でもよく思い出すし、ちょっと後悔してる」元カレを亡くした24歳女子の忘れられない恋>です。
花金の錦糸町で出会ったのは、人生2社目の会社をまさに昨日退職したあさこちゃん。「惹かれる人は基本的に既婚者」なんて悲しいセリフを堂々と吐いちゃう彼女の、人生で一番好きだった人との恋愛を聞きました。「亡くなっちゃったんですけどね」とあっけらかんと語る、ドラマチックな恋愛とは……?