結婚とセックスを天秤にかけて

着々と結婚へと話が進んでいく一方で、わたしたちは問題をひとつ抱えていました。それはセックスレスです。わたしはセックスがしたかったけれど、いつも彼に、「忙しい」とか、「いまはその気になれない」といった理由で断られていたのです。

もちろん不満だったので、なんとか解決しようと努力をしました。けれど、話し合いは拒否され、怒っても泣いてもあやふやに誤魔化される日々をくりかえすうちに、だんだんと諦めの気持ちが大きくなってきました。

そして考えたのです。結婚が、ともに暮らしともに生きる“家族”を作ることであるなら、セックスは必ずしもなくてもいい。そもそも、恋と愛と性をすべて満たしてもらうことを、ひとりの相手に求めることのほうが無理なことではないかと。

こうして考えると、この頃のわたしは“結婚”に取り憑かれていたように思います。同級生たちは次々と結婚していくし、親と話すたびに「結婚はどうするの?」と尋ねられる。そういう場所にいたせいで、付き合っている相手がいてかつ適齢期なのだから、結婚するのは当然なのだと信じ込んでいました。セックスよりも、結婚のほうが大切だと思ったのです。

それに最悪の場合は、セックスだけを「外注する」という選択肢だってないわけじゃない。実際に少なくない人々が、そうやって結婚生活と自分の性欲を両立させているのです。だったらわたしも、彼・彼女らにならってそうすればいいと考えたのでした。

――次週へ続く

Text/大泉りか

次回は<結婚を前提にしていたはずの空白の同棲期間、わたしは何をしていたのだろう>です。
「2年経ったら結婚しよう」という約束だったのに、2年半経ってようやく結婚を前提に同棲。しかもそれから1年もの間、結婚の話はない。そんな空白の同棲期間は、大泉さんにとっても記憶に残らない日々だったようです。