リベンジする気のない人様のポルノ

 それは、キャミソールだけを纏い、乳房と陰毛をはみ出させた女性の写真でした。ヌードといってもそんなにえげつないものではなく、映っている女性が綺麗な人であることもあって、どちらかといえば男性誌のヌードグラビアのような雰囲気さえもありました。「へぇ、こういうのを撮ったりしてたわけね」と思ってその時は大して何も思わなかったのですが、投稿誌を見つけた際に、その写真のことをふいに思い出して、なんだか嫌な気持ちを覚えました。というのも、その男性の迂闊さにです。

 もしかして自分のヌード写真がまったく関係のない第三者の目に触れても、気にしない女性もいるかもしれません。けれど多くの女性は気にするはずです。だからきっとその写真は、「他人には見せない」という条件でもって撮ったもののはずなのです。それをプリントアウトして、そのままうっかりと写真用紙の束の中へと仕舞って忘れてしまったのでしょうが、それがわたしの目に届くということが、見せられたわたしに対してと、見られてしまったその被写体の女性に対しての、両方に酷い。

 近頃では『リベンジポルノ』という言葉も生まれ、問題になっていますが、リベンジする気がなくても、人様のポルノを迂闊に他人に見せてはいけないのは、当たり前のことです。そんな、本来は慎重に丁重に取り扱わないといけないヌード画像を、うっかりと他人に見せてしまう迂闊さ、それは、女性の裸を尊重する気持ちの薄さゆえではないかと思います。
そして、それは、素人投稿誌の「見られて興奮する女性たち」を見慣れているがゆえ、「恋人以外に裸を見られるなんてこと、世の中には溢れている」と軽く考えているということが一因となっているのではないか、とも思うのです。

 生まれつきであれ後天的に身に着けたものであれ、性欲の嗜好があるのは仕方のないことです。想像の中でならば、いくら、どんな不埒でインモラルなことをしてもそれは自由です。けれど、実在の人物を取り扱う以上は、限りなく慎重にして欲しいものです……と真っ当らしいことを書きながらも、実はわたしにも恥ずべき性癖があることを最後に告白したいと思います。

 それは冒頭に書いた「人のオナネタを探る」という悪癖についてです。人を客体化し、その性的嗜好を把握すること、。そのことにより、下世話な好奇心を満たすだけならず、把握することでその人を支配している気分にもなっている。そんな、自分のあさましい欲望にウンザリするけれども、止められない……性癖というものは、真に至極厄介なものであります。

…次回は《売るのは「女」でなく「人間」だ!世間が抱く女流官能作家のイメージに物申す》をお届けします。

Text/大泉りか