バイトの同僚に恋の相談をされました

匿名希望さん(匿住所)
エピソード:
 十年ほど前、書店で働いていました。
 オープニングスタッフだったからか、私以外、美男美女ばかり採用されていました。
 3ヶ月ほどたった日、特に気が合って仲良くしていたお嬢様風の美女が、深刻な顔で「相談がある」とのこと。
 仕事上がりに彼女とコーヒーを飲みに行きました。すると、
「バイト仲間の男性の一人が好きでしかたない、それが苦しい」とのこと。
 あまりにつらすぎて勤務中に泣き出しそうになり早退したこともあるとか。
 なんだかかわいそうで、とりあえずその日は彼女の気が済むまで付きあいました。
 それから二、三日後にメールが。
「付き合うことになりました。彼も私を好きでいてくれたらしいです」
 夫婦喧嘩は犬も食わない、という言葉が私の頭に浮かびました。
 その二人との付きあいはまだ続いていますが、恋愛相談だけはまともに受けないよう心に決めています。

片想いの苦しさ 世界の存続のかかれるごとく語りし彼女

 ああ、他人の幸せを素直に喜べない私たち。

 届いたメールが「告白してみたのですが断られました。彼は私以外の子を好きだったみたいです」だったら、お年玉年賀はがきで切手シートが当たったぐらいには小躍りするんだけどな。

 ここには書いてなかったけれど、告白成功メールに対して、きっと「ほんとに良かったね!おめでとう!」みたいな返信をしていると思います。その言葉の成分が何割ぐらい嘘なのかによって、その人の心の清らかさが測られるわけで。

 僕は7割ぐらい。残り3割の「良かったね!」の成分は「これで今後もうめんどくさい相談をされずに済むから、俺、ほんとうに良かったね!」です。心に清らかさが入る隙間が1ミリもなくてごめんなさい。

 とはいえ、つい先日、しばらく彼氏がいなかったダメ仲間(というのがあるんだダメ人間のコミュニティには)の女友達に彼氏ができたときは、10:0の気持ちで「良かった!でかした!」って祝杯をあげたんだけれどもね。

 いただいたエピソードにサブリミナル効果のように仕込んである「私以外は美男美女」「お嬢様風」あたりの言葉が、僕の心の薄汚い炎にさらなる燃料をくべているのかもしれません。

 ますます清らかじゃない心を自覚してしまったところで、ため息をつきつつ次に行きたいと思います。

祝うのがヘタな男に祝わせる覚悟はいいな 幸せになれ