“女子”のルーツをたどることば 『女子と作文』 近代ナリコ 本の雑誌社

「作文」というとなんだか堅苦しい印象を持ってしまうかもしれませんが、本来の意味は「書きもの」全般のこと。
たとえば、一世を風靡したイラストレーターのエッセイ、詩人や歌人の随筆はもちろん、戦前に書き送られた留学生の手紙もあるし、さらには大正時代のラブレター、「かわいい」でひしめく雑誌『オリーブ』の読者投稿欄なんかも登場する。
戦前から現代まで、生まれた時代も境遇もばらばらの女性たちが綴ったことばを丁寧に丁寧にすくいあげ、新しい光をあてた珠玉のアンソロジーです。

 家庭がありながら第一線で働くことのジレンマ。この先で待ち受ける「女性の生き方」への不安。当時はまだ名前が与えられてなかった“文化系女子”の混乱と興奮。
彼女たちのことばに共通しているのは、「書く」という行為を通じて、自分が置かれた世界と懸命に折り合いをつけようとしている点です。
それは同時に、自分自身が「女である」という事実と折り合いをつけることをも意味しています。

「女○○」「妻」「母」「主婦」――女性が社会で生きていくうえで否応なく遭遇するさまざまなカテゴライズ。
そこからどうあってもはみ出してしまう、未分化なことばの集合が、いま私たちが直面している“女子”の正体なのかもしれません。

Text/倉本さおり

次回の記念すべき第一回は、「女子÷野心」です! お楽しみに。

AMをiPhoneアプリで読みませんか?

お気に入りのライターや連載を登録すると、プッシュ通知でお知らせすることや、お気に入り記事を保存できるので、AM読者は必携です!
ダウンロードはこちらから。

Twitter、FacebookでAMのこぼれ話をチェック!