東京で得られるもの、失うもの

 東京に住んでいるときは、私も「バスなんて時間がかかってしょうがない!」と言っていた内の1人だったでしょう。そして、人波にまぎれてそそくさと歩き、急に立ち止まる人に「なにこの人!」とイライラしていたに違いません。
東京のあのスピードに慣れて、毎日があっという過ぎ、なんだか消耗しているような、疲れているような……。でもそれも忙しすぎて本当のところ実感がなかった気がします。

 東京は、その街で生きる人を変えてしまう力があることも実感しています。パリで一緒にフランス語を勉強して、一緒に人生を語り合った日本人の友人で今東京に住んでいる仲間たちの中には、何かがすっかり変わってしまったと感じる人がよくいます。

 東京の社会人となってたくましく働いている一方で、目の輝きが薄れていたり、無理をして身体を壊したり、そもそも東京の雑踏に馴染みきれなくて、自分の住んでいるエリアから都心へ出ようとしない、なんて人もいます。

 もちろん東京でしか得られないものもあるのですが、その代償はなんだかとてつもなく大きいと思うのは私だけでしょうか?こんな東京砂漠で自分1人で生きて行くのにもパワーが必要になるのに、仕事も恋も、はたまた子育ても……、なんてとてもとても、私にはできそうにはありません。

 東京在住のみなさん。ぜひ、時々は立ち止まって一息つくことを忘れないでください。そして、心と身体の現状を見つめてコンディションを整えることもお忘れなく。

Text/中村綾花