おひとりさまの敵は男ではなく「ひとりじゃダメ」と思わせる“物語”

湯山玲子 湯山女子校
湯山

女子会ってあるけれど、女同士の友情は最終的に頼りになる。連続テレビ小説『花子とアン』や映画『アナと雪の女王』もそうだけど、最終的に頼りになるのは男よりも女だという感じがあるんだよね。

 女の本音中の本音を言いますと、たとえば、非常に男度の高い魅力的な男性がいて、しかし、お互いに結婚は望まない、しかし、子どもができたとする。
そういう女が他にもいたら、普通は、独占欲や嫉妬で女同士が闘い合うことになっているんだけど、「いい男」を都合が良いように共有してもいいじゃないの? とも思えてくる。出産した女性同士で仲良くなる、というね。
実際、漫画家の赤塚不二夫さんも、離婚した前の妻と今の妻が仲が良くて、ふたりで赤塚さんを支えたというし、マイク眞木さんのところも、前妻の前田美波里さんと今の奥さんの一家は仲が良くて、女たちだけで旅行にいったりもしているですよね。『源氏物語』みたいな世界ですよ。

 若い頃、遊び仲間にひとり悪い男がいて女友達みんなとヤっちゃってたのね。でもそれが互いに分かった瞬間、女性全員キーッとならなかった。むしろその男のダメさ加減にみんなで笑ったの。
女性って独占欲が強いと思っていたんだけど、案外それとこれとを切り離す能力があるってこのとき思った。

参加者

女性には意外と色んな選択肢があっていいなと思えてくるんですけど、そういうアイディアってなかなか実行されない。女性は自分が持っている力を使いきれないんじゃないかと思ってしまいます。

湯山

いいこと言うね。おひとりさまの敵って実は、男でも女でもなく、「ひとりじゃダメ」と思わされるような“物語”だったりする。
そもそも、女性は社会的に成功して、みんなから慕われるいい親分になるという話よりも、女性は成功したら、女としての満足が得られず不幸になると思わせるような話の方が世間には100倍あふれている。
メディアでも日々そんな刷り込みがあるから、自分のポテンシャルを信じ切れない。いざトラブルになったときに女性に仕事を放り出させてしまうことになる。

参加者

結婚している友達がみんな幸せそうに見えて、私の人生に子どもは必要なのか、男性は必要なのかと思い悩んでいました。それは、「ひとりじゃ生きていけない」という社会の空気も関係していたんですね。
子どもか夫のどちらかは味方につけておきたい、自分のメリットとして手に入れたいというように結婚を捉えていました。

湯山

そこまで分析できているならば「結婚している友達はみんな幸せ」というところまで疑わなくちゃいけない。幸せそうに“みせている”ということだってある。いくら女性同士の友情は強固でも、自分が選択した人生のダークサイドについては死んでも語らないものですよ。
自分が選択しなかった立場をとる相手に弱みをみせるようなこと、大人の女だったら、やりませんからねぇ。

自立ありきの30代!動物的訓練をして問題を解決しやすい頭に

湯山

みんなうかうかしていると30代から人間関係変わりますよ。自立して成熟していかないと、“前線”からどんどん脱落していく。

一同

へーーー!!!

湯山

自立するためには自分の快楽のあり方を認識することが大事。肉食系もインテリ系ももっと動物的な訓練をした方がいいような気がします。皆さん自分が動物だと思うことってあまりないでしょ? 

 たとえば、セックスってみっともないもの。そんなことをしないと子どもが産まれないわけだけど、それが人間の体を持って産まれてきてしまったものとしての宿業でもある。そういったきれい事ではない性質を持った人間の全てが、自分の人生を他人まかせでなくて、自分で選択できうる、ようにする、というのが、近代の成果なんだけど、日本人はどうも、そこに立つ筋力が弱い。
もともと弱くともそれを鍛えるのが教育なんだと思いますが、そっちは逆に思考停止の方がよい結果が出る受験システムにぼぼ取り変わってしまっている。

 私は39歳でクラブカルチャーにハマり、40代はスペインのイビサはもとより、世界中のクラブに踊りに行ってました。
イビサっていってもハイソなDJや客だけでなくて、昔の新島みたいにおぼこい若者が、処女と童貞を捨てにヨーロッパの片田舎から人々が集まっていたりもする。そのハメの外し方、ご乱行といったらハンパないんですが、でも社会にこういった装置があることで人間性を回復できて、市民社会を守っていくガス抜きにもなるんだな、と。
ヨーロッパの文化システムは本当に人間性、というものを大事にするんですね。人間性よりもカネが大事、という空気が蔓延し、そのことを恥じない日本とは申し訳ないが、民度が違う。  昔は日本にも、村の祭りで乱交したりしていたらしいけど今じゃ神輿をかつぐだけ。日本には社会的イビサがなく、アンダーグラウンドの世界にしか人間の野生、ダークサイドを発散させる場がない。
そんななか、私が見知っているもので、周囲にあるイニシエーションとして一番オススメなのがSMクラブです。

 なぜかというとSMには物語性がちゃんとあって、マルキ・ド・サドなどフランス近代文学までさかのぼる歴史もある。自分がやっているのは獣っぽいけど獣じゃないと理由をつけやすいんですね。しかも、「ここからはNG」みたいな誓約書があったりとシステムもしっかりしていて、秘密も守られる。

 自分のきれいごとや理性に収まらないグレーゾーンを知る荒療治です。そしてそれをどうやって発散し、抑えていくかということを学ぶことも、過激に見えるけれど、大人ならば自己責任で挑んでみてもいいのでは。
そうすることで頭では割り切れない、結婚や出産、セックスの問題への解決策も見つかるような気がします。