人は正しさを求めて生きているわけじゃない 

――先のことは考えられなくても仕方ない、間違えるのは恐れることじゃない、という鈴木さんの考え方には、励まされるというか、安心します。

鈴木

人は正しいものを愛するとは限らないので。正しさを求めて生きているわけじゃないから、正しさより楽しさを優先することもあるし、楽しさよりも寂しさに振り回されて何か豊かなものが生まれることもある。そのこと自体にいちいち悲観しないほうがいいと思っていて。

 生きていると「あのとき、こうすればよかった/しなければよかった」ということばっかりですけど、「そのときはそうするしかなかった」ことの連続が人生なんですよね。
今日チョコレート食べなければよかったとか、あのとき旅行しなければ今もっとお金あったのにとか、後悔していたらそれだけで人生終わっちゃうので、考えても時間の無駄だと私は思います。

――そのときできる選択には必ず限界があって、正しい選択なんてそもそもできるわけがないってことですね。

鈴木

やってしまったことは仕方ないから、やった上でじゃあこの先どうするかという最善の策を、とるならとればいい。
だから、リスクヘッジばっかりしている女の子には、マジ意味ないからやめろと言いたいです。リスクヘッジするのが好きならいいんですけど、それこそ、ここからその道を渡るのにだって死ぬかもしれないわけで、いちいちリスクヘッジしていたら何もできなくなってしまう。

 結婚するとき不利になるから、水商売のバイトはやめようとか、タトゥーを入れるのはやめようとか思ったところで、その店のお客さんやタトゥー職人と結婚するかもしれないじゃないですか(笑)。

 自分の考えも、人生も、世の中も、心配したってどうせ思いもよらない方向に変わるんですから、今したいことをしたほうがいいと私は思いますけどね。

Text/福田フクスケ

鈴木涼美(すずき・すずみ)

慶応大学環境情報学部卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。自身のAV女優経験をきっかけに執筆した修士論文が、『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社)として出版される。日経新聞の記者として5年半勤めたのち、文筆家として独立し、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)を出版。現在は、TVブロス、幻冬舎plusなどに連載中。 Twitter:@Suzumixxx

※2015年6月9日に「SOLO」で掲載しました