自虐するかしないかは、自分の心に聞いてみて

「未婚、子ナシ、30代以上の女性」の負け犬だけでなく、人種、国籍、職業、外見など、世の中から差別されている・排除されていると感じる人々に、ではどのような処世術があるのだろうか。

「私は幸せだし、毎日楽しいです」と自信を持って宣言できることが、もちろんいちばん望ましい。だけど自信のある態度など求められていない場所は実際には山ほどあるし、そもそも本人にそこまで自信がないケースもあるし、そういう場では「負けました」と言ってさっさと帰ったほうが消耗しないのも事実である。

これは私の考えだけど、自虐が有効に働くかどうかは、「本人の中にそのことを恥じる気持ちがどれくらいあるか」によって変わる。恥じる気持ちが少なからずある人にとっては、自虐は手品どころかナイフで自分の腹を刺してしまう危険な行為となる。一方、恥じる気持ちがほとんどない人にとっては、自虐をしてみせることによって、プリンセス天功のような華麗なる大脱出劇をやれる可能性がある。「そんなことを言うあなたのほうがおかしい」と、相手の狭量さをユーモアによって炙り出してみせることができる。まあその場合も、本人はいざ知らず、それを聞いたまわりの人をナイフで刺してしまう事故は起こりうるわけだけど……。だから自虐を使うか使わないかは、まず自分の心に聞いてみるのが得策なのではないだろうか。

『負け犬の遠吠え』を読んでちょっと息苦しさを覚えてしまった私は、もしかしたらまだ、「未婚、子ナシ、30代以上の女性」であることを恥じている部分があるのかもしれない。

いずれにせよ、エポックメイキングな本ではある。興味のある人はぜひ、手にとってみて欲しい。

初の書籍化!

チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。