たった一人で「温め続ける」思いがあってもいい

 まわりの人から褒められたい、承認されたいという思いは誰もが持っているし、もちろんノーラン監督だって例外ではないでしょう。映画がヒットしたら嬉しいし、興行成績が振るわなかったら落ち込むと思います。

 人間が社会的動物である以上、モチベーションを完全に自活するのは難しいけれど、他者からの承認にモチベーションを依存するのは、簡単な代わりにとても不安定です。せっかくのアイディアを失ってしまう危険だってある。

「まだ誰にも言ってないんだけど、私はこれをすごく面白いと思ってる!」という事柄を、1つや2つ抱えていてもいい。期が熟すのを一人で静かに待っていてもいい。なかなか出来なくなっているからこそ、一人で「温め続ける」ことはとても尊いのではないかと、『ダンケルク』を観て思いました。

 そんな「ドーバー海峡がキツい話」、もとい英仏連合軍の撤退作戦を描いた本作、ぜひ観に行ってみてください。IMAXは迫力満点だけど、酔います(私だけ……?)。

※2017年9月30日に「SOLO」で掲載しました