「女の武器は若さだけ」なんてことない

 私はずっと、大人になれば色々なことを我慢しながら、つまらない毎日を過ごしていくのだと思っていた。中学生の頃に音楽を好きになったときのように、何か新しいものを見つけて、体中に電気が走るような、今までと世界が変わって見えるような経験は二度とできなくから、日々がつまらないものになっていくのだろうとも考えていた。大人になると、思春期ほど感性も成長しなくなるし、音楽だって中学・高校時代に出会ったものを繰り返し聴くようになって、新しいものを自ら聴くこともなくなるらしい。

 だから、大人になっていくのが怖かった。だんだんと自分を生かすための活力がすり減っていくものだと思っていたし、年齢を重ねると、そういう自分の変化にも気が付けないうちに、大人になっていくような気もしていた。
でも、フジロックにくる度に、自然のなかで昼間から酔っぱらいながら、恋に落ちるように好きになってしまうアーティストに出会えたりする。大人のいいところを全て煮詰めたような数日間を過ごしながら、体に衝撃が走り、夢中になれるような存在に巡り合うことができる。

 フジロックの主な客層は私よりも少し年上だ。いい年齢の大人たちが遊びに対して本気になっているところを見ることができるのも、なんだか頼もしい。あそこには「いい大人なんだから」なんてことを言う人は誰ひとりとしていない。各々が自由気ままに、自分の満たしたい欲望に向き合っている。
この空間に居合わせるだけで、私のこれからの時間も肯定できるような気がしている。

 年齢を重ねることはそんなに悪いことじゃない。私にとっては。「女の武器は若さだけ」という言葉があるけれど、私は今のところ若さを武器にしたことなんて一度もないし、年を重ねるごとにやりたいことがどんどん増えていっている。もっと若かった頃には気が付けなかった自分の一面を見つけることだってできたし、自由にやりたいことができている。
つまらない毎日を過ごさなくてはいけないとか、好きなことが増えないとか、そういうのは傾向として成り立っているだけであって、自分の心持ち次第でいかようにもできるんだろう。だって、実際に周りには好きなことをたくさん見つけてきた大人たちばかりがいるわけだし。そういうことを、フジロックに行く度にしみじみ思う。

 今年のフジロックも例年以上に楽しくて、しばらくは頑張れそうな気がする。こんな風に何かと出会える機会がどんどん増えていって、もっと好きなものや夢中になれることを増やしていけたらいいと思っている。

Text/あたそ

次回は<友達に「恋人ができた」と言われると、嫉妬する。恋愛感情はないのになぜ?>です。
男女問わず、友達に恋人ができると、嫉妬してしまう。私よりも優先順位が高い存在ができてしまったことに。「他の女に取られたくない」とも「私を愛してほしい」とも違う、あたそさんを襲うこの感情は何なのでしょう。

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