ひとりでいると、怖いことに敏感になる

本書の最後のページに、「ひとりだと怖いことに敏感だから、食べないと、生きられなくなることがよくわかるようになった。食べることが当たり前になるようにしている。生きるというより、どっちかというと、死んじゃうから食べるという感じ」と高山なおみさんは書いていて、私にはこの感覚がとてもよくわかる。

ひとりでいることは怖い。一人暮らしも怖いけど、いちばん怖いのはたったひとりで言葉の通じない海外にいるときだ。その代わりに自由がある! などと言うつもりはそんなになく、一人暮らしも、たったひとりの海外旅行も、ただひたすらに怖い。自由なんかどうでもいい。

そんなに怖いならやめればいいのにと多くの人は思うだろう。だけどやめるどころか自らその恐怖に頭を突っ込んでいくのは、「自分が頑張らないと死んじゃう」という状況で目に映るものの景色を、私が愛しているからだと思う。普段の一人暮らしはなんだかんだ言いつつ日常なのでぼーっとしていることのほうが多いが、たったひとりの海外旅行は感覚が研ぎ澄まされて、頭の中の靄が晴れていくように感じることがある。今度から、独身でいる理由を人に尋ねられたら「(ひとりでいるほうが)怖いから」と答えようかなと思った。

というわけで、『自炊。何にしようか』は日々の食事を「死んじゃうから」と思ってしている人にはかなりおすすめである。「死んじゃうから」と思ってする食事は、一見するとなんだか侘しいように聞こえるけど、本書はなぜか侘しくない。ただ、それが本質なのだと気づくだけで。

Text/チェコ好き(和田真里奈)