怒りの感情を抱いている自分が誇らしい

昔、彼氏がコンビニで若い女性店員さんに老人が付き纏ってセクハラめいた言葉を言ってる場に遭遇したそうで、彼はまず老人を止めようと思ったのだけど、次の瞬間に「でもこんなことをするくらいの異常者なのだからナイフとか持ってて刺されるかもしれない……」と思って何もできなかったらしい。30代の体格のいい、大の男がヨボヨボの老人のセクハラを止めるのを恐れるのだ。話を聞いた私は彼に「その店員さんは君よりもっと怖かっただろうね。それから女はそういう状況に人生で何度も何度も陥っていることを知っておいてね」と伝えた。

私も異常者に刺されるのは怖いのでケツ撫でマンや、女はもっと怒れマンを殴りに行ったりはしないしできないけど、少なくとも昔はそんな感情を持つという発想すらなかった「怒り」の感情を、いま抱いている自分が誇らしい。

冒頭のインタビューで「怒りは尊い」と言ったのは、つまりそういうことだ。小学生の頃はケツを撫でられてもぽえーんとしているだけだった。中学生の頃は私が自意識過剰なんじゃないかと自分を疑っていた。高校生の時は何もできない自分が惨めで情けなかった。20代の時は私が通報しなかったせいで新たな被害者が出てしまうと自分を責めた。

でも今は違う。私はケツ撫でマンに対して怒っている。何も行動に移してないけどとにかく怒っているのだ。それだけで私はいま尊い。なのでセクハラされた時、痴漢にあった時、デートレイプされた時、もしあなたが何の行動も取ることができなかったとしてもどうか自分を責めるのはやめてほしい。必要なのは「怒り」だ。別に相手をボコったり警察に通報したり裁判したりしなくてもできなくても、理不尽なことをされた時に怒りを感じるだけで、それだけであなたは今また少し尊い存在になっている。ということを忘れないでほしい。というのがインタビューに付け足したかった内容でした。

Text&Illustration/峰なゆか

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